投稿日: Aug 27, 2013 12:17:21 AM
アイディアの矮小化が進む
昔、「王様のアイディア」という便利goodsの店が繁華街にはあった。昔からアメリカの雑貨には面白いものがいっぱいあって、日本への土産にすることも多かった。ハエ取り銃などもいくつもあった。料理に使うものも日本人なら包丁一本でできることを器具で行っているのだろうかと思わせるものが多くあった。これらは生活の違いから、日本では役立たない場合もあり、それらを日本流に焼き直した便利goodsが手に入るようになっていった。
「王様のアイディア」は完全な実用品もあるが、ジョークのようなものもあって、どちらかというと暇つぶしに寄るとか、ちょっと気の効いたプレゼントとか、話題作りのネタとして買うことが多かったのではなかったか。
数年前に「王様のアイディア」は全店撤退したと思う。また雑貨輸入をしていたSonyPlazzaや同嗜好の店も縮小していった。しかしそこにあったものが消えたのではなく、100円ショップには相当数が受け継がれているように思う。まあ100円なら1回使って「ふぅ~ん?」で終わっても許せるということだろう。こういった雑貨の中心は中国の義烏市であり、そこで世界中のものが調達できるというし、今では中国のオリジナルも相当増えてきた。
これらを見ているのは楽しいが、その1点1点でどれだけのビジネスになるかは疑問である場合が多い。要するに「あると便利」は裏返すと「なくても差し支えない」のだから。こういうことを思い出した理由は、次々に登場するスマホアプリが同様に「あると便利」&「なくても差し支えない」を延々と繰り返しているからだ。これはアイディアの矮小化である。
スマホというトレンディなものの上で動くので、ほんの些細なアイディアでもニュース価値が生じるのだろうが、はっきりいえば無責任なアプリが多い。利用者も昨年の今頃はどんなアプリを話題にしていたかは覚えていないだろう。
だいたいスマホは操作端末とかセンサーの役割しかなくて、バックに何らかのシステムが動いている必要があるが、そこが不十分とか、あるいは未着手で将来の可能性だけを語っているのに、「スマホすげ!」的な記事がバンバン出てくるところがイヤらしいし、そういう風潮に乗って安易にベンチャーなどを指向する人が火傷をすることになる。
アイディアを膨らますことは奨励されるべきことで、スマホで実験をする人はもっと増えるべきだし、その実験をネタに意見交換して練り上げる必要がある。その練り上げるプロセスに非常に重要な意味があるので、アイディアをぶら下げて資金を集めて即ビジネスというのは、さもしいことである。それは今の日本人がからみてアジアの人が日本のアイディアの二番煎じで小商いをしようとしているのを見ると快く思わないのと同じことをしているのだ。
おそらくTEDのような仕組みは投資を集める目的ではなく、またアイディア開発の早いもの勝ち競争でもなく、アイディアが多くの人に練られた結果、誰も考えていなかったような新しい地平が見え始めることの素晴らしさを狙っていると思う。つまりちっぽけなアイディアに終始しているのとは次元の異なる大きな変化を模索しているのである。逆に言えばスマホにかじりついているだけでは、何時までも新しい地平は見えないということだろう。