投稿日: Jul 24, 2013 1:12:42 AM
薄利が極限まできていると思う方へ
印刷機を廃棄した会社の群は“名無しさん”になってしまって、これは業界を形成してた時と比べれいろんな面で弱くなるので、おいそれとは業界団体をつぶすわけにはいかない。しかし印刷のビジネスの流儀や文化を引きずっていることにはマイナス面もあることを記事『印刷という尻尾』で書いた。
印刷営業はいろんなビジネス機会を見つけ出す宝の山に行くのような仕事であり、提案の機会も多いのだが、これを売上に結びつける際に長年の印刷の習性である「単価×数量」という値付けに足をすくわれてしまうことが多い。大体なんでもデジタルになれば売値は下がっていく。これはモノを作ったり流通するコストがかからないから当然なのだが、電子書籍を1冊制作する費用などペラのパンフレットを変わらない程度になってしまう。それで、いくら顧客のためになる提案であっても、社内的にはやってもしょうがないと評価されてしまうことがある。
「単価×数量」という発想は活字の時代にできたものである。そのためコンピュータ化してもキー1タッチあたり幾らという値付けをしていたこともある。しかし画面で作業をするようになると、カーソルキーをいくら叩いても1銭にもならないわけで、キータッチベースという値付けは意味がなくなったが、ページ幾らという形で引き摺っている。
こういう「単価×数量」を基準にするのは設備産業的な考え方で、マシンの時間単価からきているが、パソコンを使うような業務はハードの設備はなく、特にデジカメによってスキャナすら設備の価値をなくしてしまったので、ものすごく安くなってしまうのである。
しかしサービス価値は異なる。ハードディスクは1万円で新しいのに買い変えてしまえるが、もし事故があって読めなくなった場合に、データのレスキューするには10万円とかかかかる。1万円のHDDに10万円かけるのはデータの価値がそれだけあるということである。
つまり情報価値に応じたサービスの値付けができるようにならなければならないわけだが、印刷屋の看板があると顧客も「単価×数量」を基準に考えてしまうのである。
こういった関係が変えられないので、印刷業は顧客に対して「完全原稿」を求めることで、「単価×数量」の経営が崩れないようにしようとした。しかし現実は逆であって、顧客に前準備を求めれば求めるほど印刷物は発注し難くなるので、仕事を取る上ではナンデモ屋にならざるを得ず、結局業態は「何屋」か判らなくなるのである。
だから個別企業は情報コンビニとかコンシェルジュをうたってサービスの値付けを目指すのだが、それらの集まりは“名無しさん”業態なので、顧客の側から見るとビジネスのルールが把握できない。おそらく情報加工というだけで新たな業態を成立させることは難しいだろう。サービスという点ではBPOの方が顧客にはわかりやすい。これは単価ベースではなく業務委託的なものなので、何でもこなして信用さえ得られれば、継続的に契約してもらえる。
ただし社内で作業をするにしても、利益管理という点では、ほぼ人材派遣に近いものであろう。