投稿日: Oct 04, 2011 11:36:32 PM
ネットかマスかで悩む方へ
ネットが盛んになっても従来のテレビや新聞や雑誌などマスメディアの役割が変わるわけではないことを今まで書いてきた。それはマスという到達量のことではなく、生活者の慣習としてマスメディア接触が生活の一部になっているからで、これが緩むには何十年という世代代わりの時間がかかる。今は下り坂であると思われているが、しばらくはマスメディアでなければできないことはあり、広告媒体としての価値はある。問題はコストパフォーマンスであって、イニシャルの費用が高くて敷居が高いこと、ターゲティングができにくいのである程度無駄を承知でなければならないこと、また短いメッセージが生活者の意識に引っかかるかどうかのギャンブル性もある、ということは理解しなければならない。
販促をしようとする者にとっては、新規開拓をするには過去のコンタクトのないところに出向かざるを得ず、無駄は目をつぶってマスメディアに「投資」せざるを得ないことがある。つまり今ではマスメディアをマーケティング・広告に使うことは、何時でも、誰でも必要なものではなくなっているが、ビジネスの成長と共に、いつかは自分たちもマスメディアを使って飛躍をしたいと考えるようなものかもしれない。ではマスメディアが使えない事業体はどのように販促をしてきたのか? POP(購買時点)や営業以外はDMが主であったはずだ。近年伸びた通販にはPOPや営業は無いのでダイレクトマーケティングが主体だが、それを広告代理店などに委託するよりも自力で行うことがノウハウの蓄積に役立っている。
ここではダイレクトマーケティングがマスメディアに勝るという一般論は通じず、ダイレクトマーケティングの方が事業の実態に合わせて事業体が直接こまめにコントロールできるので成果が分かりやすく、その試行錯誤の積み重ねがあれば事業を伸ばせ易いということである。このメディアを直接コントロールするノウハウが生きるのがネット販売であって、紙カタログやダイレクトメールの負担を減らしつつ、自分でネット販売の工夫も積み重ねていて、それが今ソーシャルメディアへの取り組みやスマホ・タブレットに向かいつつある。まだそれらでの成果が十分出ているとは言いがたいが、SNSやスマホ・タブレットに魔法の仕掛けがあるのではないことは、マスメディアが万能でないことと同じである。
クロスメディアの提案というのも、いろんなメディアに手を広げればよいということではなく、事業にあったようにいろんなメディアの役割に応じた編成をし直すことと考えなければ、コストパフォーマンスの悪いものとなってしまう。むしろメディア利用全体を見渡して効果の低いメディアをどれだけ減らせるかによって、新しいメディアを使う予算や余力が生み出され、実験をするリスクもカバーできるのである。その意味では効果の不明確なマスメディアを減らすことが最初の仕事になることがある。しかし自分でメディアをコントロールしている中で、これはマスメディアでも訴求できるという感触をつかんだ時点で、それをうまく使えないと機会損失にもなってしまう。