投稿日: Jun 05, 2012 12:36:35 AM
InDesignからの展開が難しいと思う方へ
広告モデルが成り立たない雑誌に関しては大手出版社は切り捨てる方向であるので、新たな雑誌の担い手が必要なことを前記事『離陸しないデジタルマガジン(1)』で書いた。そもそもiPadが登場するのに合わせてデジタルマガジンも多く試みられたのだが、雑誌紙面のリッチさを画面で表現するには手間ヒマがかかりすぎてコストが合わないことが挫折の一因であった。つまりInDesignから吐き出したデータを再加工することを考えると、紙媒体用のコンテンツの使いまわしをするよりも白紙からデジタルで作ったほうがスムースであるし自由度が高い。紙のデザインにこだわるならむしろPDFで十分というのが実情だろう。しかしこれでデジタルマガジンが終わってしまうわけではない。
デジタルマガジンの問題は、画面とかタブレットのサイズに再レイアウトが必要なことで、これがInDesignと同じような努力を必要とするなら上記のように挫折なのだが、WebのホームページがBlogやCMSで作られるようになったように、また paper.li flipboardのような半自動の仕組みを参考して、新しいデジタルマガジンのプロセスというのが出てくるであろう。しかしそれはすぐにではない。なぜならHTML5のような基盤になるものや、特に日本語の場合は多様なフォントを使う基盤がまだ整っていないからである。
今はデジタルマガジンはアプリのように各社各媒体ごとに個別に作っているから大変なのだが、紙媒体の場合には歴史的に製本様式のパターンが多くあって、いちいち紙のページ設計やページめくりを白紙から設計する必要がないことを記事『本のアーキテクチャ』で書いた。近年にWordPressなどのCMSでホームページを作るようになると、すでに出来の良いテンプレートが沢山あるので、アーキテクチャを考え直さなくても紙媒体のように流し込む中身だけ考えればよいようになってきた。ところがHTML5になると現在使用中のCMSも作り変えが必要になる。そういった流動的な時代を超えないと本格的なHTML5時代にはならないのだろう。
eBookがEPUB3になるような機能追加が、HTML5によってこれからWebの世界に起ころうとしているのだが、それは単にWebだけの話ではなく、モバイル・タブレットを意識した工夫や、あるいは紙媒体での流用を考えたものなど、従来のメディアの領域をまたいで、ひとつのコンテンツをいろいろな姿で表現する方向に進むことは自明である。ワンソース・マルチユースは完結することのない永遠のテーマだが、それは絵空事に終わるものではなく、開発の方向を示すものであると考えるべきだ。
デジタルマガジンは、紙の新聞や雑誌が内容とは関係なくスタイルとしてあったように、アーキテクチャとレイアウトを組み合わせた何らかのスタイルとして徐々に姿を現していくものだろう。