投稿日: Nov 28, 2012 2:8:14 AM
過去のノウハウを活かしたい方へ
Wikipediaと比べるとゴミ溜めのような2chでも重要なことが書かれている場合もあれば、Wikipediaに中身の無い項目があったりもする。しかし2chの場合は良いことが一つ書いてあっても、間違ったことやノイズがその10倍以上あるので、付き合っていられない気持ちになる。Wikipediaは編集とか管理の仕組みがある点が異なって、それは結局は紙の出版モデルに近いものである。2chはそれとは逆に便所の落書きも現実というか本音としての情報だから無意味ではないというスタンスだろう。しかし便所の落書きの上に新たに何らかの進展や発展が期待できるわけではないし、ビジネス化も考えられない。
私は「ネット善説」の立場なので、良貨が悪貨を駆逐する方向で考えるわけだが、日本で2chのアクセスはすでに24位に後退しており、匿名でないSNSやblogの方がずっと上位にありmixiでさえも2ch以上になっている。ただWikipediaとニコ動がほぼ同じところにくるほどの変化があるが、ニコ動は管理者がしっかりしていて、どちらかというと既存のコンテンツビジネスのルールを尊重して、それを補完する立ち位置にある。良くも悪くもアクセスが集中するサイトは内容が管理される方向にあるといえるだろう。
記事『デジタルメディアの新陳代謝』ではQAサイトの破綻について書いたが、これらはWikipediaのような中心のないクラウドソーシング的なやり方では行き詰まる例であり、Web魚拓なども同じような道を歩むだろう。つまりソーシャル的なクラウドソーシングのプロジェクトであっても、しっかりした運営上の核組織をもつ必要があるわけで、これは青空文庫であってもコミケであってもうまくいっている理由はそういうところにあると思う。そうするとネットメディアというのは、やはり運営主体に要求される要素としては、編集・出版と共通する人的要素が必要になるわけで、それが出版や電子出版の世界からのスピンアウトで成り立つようになるのか、他分野の人が行うのかという問題になる。
アメリカのネットジャーナリズムは紙の出版のリストラやスピンアウトが激しく起こった際に立ち上がってきたことを記事『クリエータの民族大移動』で書いた。今まで紙媒体のために取材をしていた人でも、ネットメディアの仕事をする際にはビデオカメラで取りながらインタビューしなければならないかもしれない。だから紙の出版でいろいろなノウハウを培った人々も、今までの境遇のままでデジタルメディアはできないだろう。そういったノウハウが活きる前提として、デジタルデータを扱うスキルを身につけなければ、「転職」はできない。デジタルデータで汗をかいた人だけが企画編集能力を発揮できるようになるということは、前進が何をしていた人でも同じである。
これはパソコン黎明期と何か通じるものがあるように思える。
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