投稿日: Jul 27, 2012 12:44:12 AM
オープンさが武器になると思う方へ
7月25日のオープンパブリッシングフォーラム「出版マーケティングをみなおす」のディスカッションで、やっぱり「Amazon強し」の声が多く、それは対抗することが無意味というか、「何か違う方法でできれば…」という感覚である。まだAmazonは日本では紙の本の流通しか実績がないが、分野による差はあるにしても日本の書籍流通の1-2割りは扱っていると思われるほどで、これが電子書籍になってもAmazonに売ってもらうことは大前提の雰囲気である。だから出版社の多くは自力で売る努力をするよりもAmazonに依存したい面もあるのだろうが、Amazonもそれは承知の上でこれから出版社との取引関係もドライでせちがらいものになっていく傾向がある。
以前にAmazonをテーマにしたミーティングの記事『本から始まって本に戻るAmazon』及び『コンテンツの価格決定権をめぐって』でも触れた価格設定やフィーの他に、Amazonのプラットフォームの強みである「お勧め」や「レビュー」も販促ビジネスとして収益モデルにしつつあり、Amazonは本の販売における利益最大化の準備は整いつつある。これに今対抗できる方法はないので諦観状態にある。これは本に限らず通販対象なら何でもいえることなのだが、本来ならネットそのものが「お勧め」や「レビュー」の機能を果たすべきなのだが、Amazonは巨大なデータセンタを自分でもち、そこでのビッグデータ処理によって他所にはない販促効果を出してきたので、今からクラウド化とかビッグデータの扱いを考えている状態では既に全く歯が立たない状態なのである。
では今後もAmazon支配の中で本を売るしかないのかという点では、記事『将来展望が拓けるとき』では復刊ドットコムがマニアックな商品においてはAmazon以上の成果を出しているお話をされていたが、それは単なるオンライン書店の販売力ではなく、商品リリースに至る過程を情報化して発信しているからで、もともと復刊ドットコムが復刊リクエストから予約販売まで一連のコントロールをしているから可能になったことである。
つまり単に出来上がったモノを陳列しているだけのところと、商品を生み出す力をもったところの差であって、マーケッティングも著者や編集者が一緒になって行っていくようなスタイルなら、読者にとってはファンクラブのようなコミュニティ感の出たものとなって、ネットでの販売拡大の可能性も高まるだろう。Ebook2.0 Forumの鎌田博樹氏は最近のアメリカでの本に関するマーケティングの動向をいくつか紹介し、その中でもソーシャルファンディングやクラウドソーシング、あるいは書籍の一部を先に公開するプリマーケティングなど、本つくりそのものが話題になり、従来のマス広告を超えたマーケティングがネットの中で始まっていることがわかる。
Amazonは自分のデータセンターの中で効率的にいろんなプロモーションができるようにプラットフォームサービスのメニューを増やしていくのだろう。しかし、従来は学術分野で執筆から査読、配布、論文参照、新たな執筆という知の生態系の循環のようなことがあったのが、Amazonの外のオープンな世界で、しかも商業的な出版においても、知の生態系のようなものができてくるのであろう。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催