投稿日: Apr 28, 2010 6:35:17 AM
青空文庫と電子書籍は何が違うのかと思う方へ
kixプレセミナー黒船「電子 書籍ビジネス」に対するメディア再構築を考察する のことを考えていたら、どうしてもこれは言っておかなくちゃと思ったのが、オンラインビジネスとしての電子書籍は必然的にフリーミアム「無料経済」の一部として発達するであろうことと、「無料経済」でビジネスをするにはクラウド時代のIT戦略が必要であることだ。「出版界再生議論の欠落点」では既存の出版社には電子書籍戦略に手が出せないであろうというようなニュアンスにしてあるのは、このことだ。出版コンテンツを活かしたいなら、しかるべきIT陣営の誰かと手を組むしかないといいたい。それがアメリカの企業で何が悪いのか、私にはよくわからない。
電子書籍がクラウドとどう関係するかは改めて述べたいが、簡単にいえば第1に音楽のように膨大なコンテンツがないとオンラインのロングテールの世界ではすぐ飽きられてしまうこと、言い換えると1個人が読みたいものを一生掛かっても読みきれないほどコンテンツが必要である。第2にはこの膨大なコンテンツを従来の出版のように1点づつ処理していたのでは、デバイスの多様化に追いつけないので、サーバで自動処理できるようなモデルとツールがなければビジネスとしてスケールアウトできないこと。スケールアウトができなければ私家版の集まりである青空文庫と同じである。第3はネットでは販売とマーケティング・マーチャンダイジングがオーバーラップしてくるので、Webサービスなどで各社の膨大な処理が繋ぎ合わさっていくITインフラに対応しなければならない。これらはまことにクラウドにぴったんこだ。
つまりクラウド環境こそが電子書籍時代を可能にするともいえる。(そうなった時に電子書籍と呼ぶのかどうかは疑わしいのだが)クラウドに取り組まない電子書籍プランは絵に描いた餅である。しかし以上は電子書籍が市民権を得るまでのことで、クラウド化した時にビジネスとして儲かるかどうかはまた別の話だ。膨大な点数、膨大な顧客、ロングテール、ということは、今までのレジなりカウンターで一人ひとり現金決済して売上管理するビジネスモデルではなく、会員制(会費・購読予約)、チャージ、デポジット、~までホーダイ、バンドル(今端末を買えばOO円分タダ、とか他媒体とセット)、など別の金の流れが必要になると思う。携帯電話料金もそうである。
要するに「△△プラン」の方は月いくらというのは、利用者の利用実態を分析して、お得感を感じてもらいながら、利益も出せるようなシミュレーションをして経営をしているわけで、その中でフリーミアムを成立させるために大変な演算が必要でクラウドの世界でもある。何か似たモデルを思い出さないだろうか。投資信託である。物理的なモノが移動しないデジタルサービスは演算が勝負の金融商品のようなビジネスになっていくのである。