投稿日: Jul 05, 2012 12:50:21 AM
デジタルメディアの総合理解をしたい方へ
EPUB3は日本の電子書籍の流れを専用機の時代からオープンなパブリッシングに切り替える大きなエポックであるが、皆さんが注目しているのはリーダー・ビューワソフトの出来栄えだろう。だがこれはどのように改善していくべきかの課題ははっきりしているので、あとはただ関係者が協力してコツコツやっていくしかない問題である。それは20年前のDTPとかなり似たところがある。それは、外字はどうする、組版はどこまで、フォントは、などであるが、それよりもDTPの前工程のところの課題も考えておかないと、パブリッシャ自身のコストを抑えることができない。
それは造本設計をどうするか、表紙・目次・索引はどうやって作る、校正はどうする、保管・改訂はどうする、などである。これらはEPUB3によって「できる/できない」というQ&Aには出てこないが、本つくりの随所で従来の紙の本を作るのとデジタルメディアを作るのとでは勝手が異なることを総合的に理解することはまだ難しいようだ。それは従来の編集・写植・印刷という分業が成り立たないということもあるが、出版サイドではエディタスクールなどで教えていた全体的な業務知識を教えるところが無いとか、知識の変換がまだできていない、ということがある。
しかし電子出版なるものが魑魅魍魎かというと、そんなことはなく、記事『視点を少し先に移すと…』で、アナログコンテンツの最後の砦が本であることを書いたが、本以外のところではすでにわれわれの日常で使われているデジタルメディアの技術をeBookに適合させるだけである。それはDRMでもクラウドでもECでもeBookに適応できて、それらを複合した本のビジネスモデルがプラットフォームのサービスとして提供できるところが日本では薄弱だということだ。だから本来ならば金をかけて支援すべきはコンテンツのデジタル化ではなく、ビジネスのプラットフォームなのだが…
現在のようにどこもコントロールすることなく各社勝手に取り組んでいても、DTPやWEBの技術によって日本のeBookのちょっと先の姿はどうなるのかを予測することはできる。表紙・目次・索引はHTMLの技術なのでWebと同じようなものだ。組版に関してはDTPの場合は各ページのレイアウトを生成してから行組版の最適化をするという「行って、戻って」という処理がWebでは使いにくいので、Word文書のように始まりから終わりに向かって一方向に組むことになり、図版に文字を回り込んでうまく組むというような「行って、戻って」はできない。それが必要ならPDFとかリフローしない固定レイアウトを採用せざるを得ない。フォントはサブセットをエンベッドするという方法で、そこに出現する文字だけ形状データを埋め込むことになろう。
出版をする人にこういったことを理解してもらうためには、やはりデジタル版エディタスクールのようなところが必要なのかもしれない。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催
関連情報
出版のグローバル化を考えるセッションを行います。 7月6日(金) 15:00-16:30(90分)