投稿日: Feb 17, 2012 12:56:37 AM
新聞破綻の先に何があるのかと思う方へ
朝日新聞の2012年2月16日の紙面に、デジタル・ファースト・メディア(以下DFMと略)社のジョン・ペイトン氏の取材が載っていた。アメリカでは00年代に入って新聞広告が落ち込んだためにローカル新聞の休刊がどっと増え、100年以上も歴史のある多くの新聞が経営に行き詰まった。DFMは経営破たんした新聞社を75紙手に入れて、新聞コングロマリットとしても上位のグループとなった。ジョン・ペイトン氏は新聞記者あがりで新聞社経営もしていた人だが、新聞社を売却して悠々自適の生活をしていたところにこういった事態が起こり、デジタルでの情報発信をした後で紙の新聞も出すというモデルをひっさげて新聞界にカムバックした。
今は破綻したローカル紙の再建をしているが、新聞を作ることよりも先に、新聞記者が直接ソーシャルメディアで住民とつながって情報ハブの役割を果たした後に新聞記事も書くということをしている。そうやっても新聞の発行部数が伸びるわけではなく、ほぼ横ばいだということだが、紙の読者の3倍ほどネットの読者がなって、ネットの広告が7倍伸びたところがある。今までの新聞社のWebでの広告収入は微々たるモノであったのが、ネット広告が経営を支えつつある。
また新聞社のリストラも行っていて、印刷の外注化とか、印刷関連および事務的な部分の人を17%減らして、むしろ記者は増やしている。新聞記者といっても社内の机に座っている人ではなく、住民参加で取材テーマを決めるとか、地域の問題解決のためにネット・ソーシャルメディアなどのコミュニケーション手段を使って積極的に住民の中に入っていく人たちが求められている。雪が沢山降るとWebで雪かきボランティアを集めるとか、ハリケーンが来るとなるとそれが地域にどのように近づいているかとか防災情報を発信し、また被害情報を集める。住民に電子メールを送るようなこともしているようだ。
要するに新聞のコンテンツをソーシャル活動として実践し、何をやっているかを住民に開かれた形で示していて、住民のもつ新聞社のイメージをすっかり変えることを行っている。それ自身は収益を生まないが、自分たちがネット上でオリジナルコンテンツになって、そこに活気が生まれている。こういった方向性はジョン・ペイトン氏は新聞記者あがりなので、ネットの時代においては記者個人が社会の前面に出ることで、本来ジャーナリズムが果たしたかったことができるようになるという閃きがあったのであろう。
この人の評価はアメリカの新聞界では2分されているという。ペイトン氏自身も「紙の新聞で育った連中の意見にはもう耳を貸さない」と言っていて、新聞紙ありきの考えとは水と油のようになっている。とはいってもこのグループでもまだ紙の新聞の売り上げの方が大きいわけで、今の微妙なバランスは今後崩れる日が来て、また違ったモデルになることを予測させる。このローカル社会と結びついたソーシャル活動とメディアの試みには、もう一歩先が有り得ると私も思っている。