投稿日: Apr 22, 2015 12:45:8 AM
ビジネス提案をする際にコストダウン効果をアピールすることが多いが、それは主に購入・調達の外部支払いを減らせるという提案がわかってもらいやすいからだ。しかし購入額を減らせるという提案にインチキが入り込む可能性があるのは、コストダウンの分だけ発注者側の負担を強いる場合である。これは大昔からそうだった。パソコンの登場時はBASICを覚えれば事務処理・給与計算・諸々が簡単にできるようになるという掛け声につられて初期のパソコンを購入した人は多く、当時のパソコン雑誌にはアプリケーションソフトをBASICのコードで書いた例が載っていたものだった。(写真は8KBASICの紙テープ)
その後パソコン利用者はBASICを諦めてパッケージソフトを購入するようになるが、ソフトの開発者は殆どマイクロソフトに負けてしまい、SIerはBPOで喰う時代になった。モノの提供の場合に、その分野のナンバーワンもナンバーツーも同居できるが、ソフトに関してはナンバーツーは生き残れないからだ。今のクラウドサービスの時代もこの原則を引き継いでいる。だからSIerはプログラム開発をして終わりだったのが、業務処理まで請け負うようになったがごとく、クラウドサービスもプログラムを作ってサーバーに置いておけば商売になるという具合にはいかず、顧客ごとに必要な業務処理の面倒もみなければならなくなるだろう。
ホストコンピュータ時代のシステム開発からすると、またパソコンのパッケージソフト購入に比べても、クラウドのサービス利用は初期費用ゼロに等しい。しかし今の段階では劇的に利用が進んでいるようには見えない。それはたとえソフト代がタダであったとしても、業務に必要なワークフローを考えて、その業務に適したソフトウェアを評価して、それらが使えるように社内を教育して……全体のパフォーマンスを評価して、結果的にどれだけ業務改革がなされたのか把握するまで、社内で何らかのプロジェクトをまわすことが大変で億劫だからだ。クライアント内部の見えないコストを下げることの難しさである。
そうすると何が必要なのかがわかってくる。顧客の業務コンサルティングなのである。SIerはシステム設計に際して、顧客のビジネスをヒヤリング・分析して新しいワークフローを提案していたわけだが、それと同じようなことを誰かにやってもらわないと業務改善が行い難いわけである。しかもSIerはソフトのバグがなくなればクライアントとはオサラバであったのが、実際に業務改善の結果を出さなければならないとなると、社員教育の面倒から、内部のコスト削減がどれだけされて、業務パフォーマンスがどれだけ上がったかというような評価もやってくれるパートナーが必要になる。
大プロジェクトならばコンサルティングのプロが出向くのだろうが、一般の事業所の場合は誰がコンサルをするのかが残された課題であるように思う。
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