投稿日: Jun 16, 2011 11:35:50 PM
コストダウンの先は何かと思う方へ
ここ20年ほどのメディア制作におけるデジタル化の急激な進展は、ほとんどがコストダウンというドライブ要因によってもたらされた。機器のダウンサイジングはもっとも分かりやすいものであるが、ソフトウェエアも値段が下がり、通信料金も下がり、教育費負担も下がり、さらに海外のアウトソーシングで人件費も下がっていった。そういったコスト構造は誰でも知っているので、これに伴い制作の売り上げの方も下がっていった。無料のものがはびこるとか、無料のものしか残らないのではないかという悲観論もある。
このメディア制作をとりまく外部のコストダウンの潮流があったので、実はメディアビジネスはダウンサイジングに助けられてそれほどシビアなコスト管理はしなくとも、何とかしのげたという面はある。しかし表向きは生き延びているとしても、少なくとも過去の制作プロセスのコスト構造を前提にした管理は破綻してしまっている。社内体制や外注などが昔のままであるために、せっかくのコストダウンという外部要因の追い風が帳消しになっている会社もある。もったいないことをした。
同じような出版物が使われる通信教育や教材の分野が出版活動と異なるのは、先にサービス対象である受講者があって、そのサービスの一部に媒体が位置づけられることで、売り方もコスト管理も別の考え方になっている。つまり出版物が必要な局面がなくなりはしないが、出版が「本つくり」として独立して経営されることは減って、記事『もっと活性化するカルチャー事業』に書いたカルチャー事業の中の一機能が出版であったり、他のビジネスへのコンテンツ提供などの比重が高まろうとしている。コンテンツホルダがメディア作りの力を蓄えつつあるといえる。
つまりメディア制作がコストダウンできたことは幸いで、それで生き延びられたのだから、その先もメディアビジネスの環境変化に沿った歩み方をするのが賢明であろう。今まではコストダウンによるメリットを、過去のマネジメントの破綻の後始末にまわしていたかもしれないが、例えばに『視点を変えると出版は変わる』書いたようなもっと前向きなビジョンをもって、それに向けて今可能なコストダウンをした成果を再投資するというのが、無理の無い進め方だろう。
7月1日のセミナー コンテンツのデジタル化でビジネス活性化 では、単に目新しいソリューションを紹介するというのではなく、コンテンツ管理のベンダーさんに集まってもらって、以下のようなことを考えたいと思っている。
コンテンツを管理することの意義がわかる。
直接のコストダウンのヒントが得られる。
無理のないプロセス・フローが考えられる。
IT化の流れに自社を合わせられる。
将来にわたって成長できるロードマップが描ける。