投稿日: Mar 28, 2015 1:47:30 AM
前職では職務上原稿を書くことが多く、たまに単行本も出すが、多くはレポートとか雑誌記事を週に2-3本こなしていた。こういう仕事は昼間はほとんどできず、たとえ机の前に座っている時間があっても電話がかかってきたり、人が来たりするので、結局は夕飯のあとになってしまう。だいたい終わるのは0時をまわった深夜になる。原稿を書く時点というのは、「そろそろ催促がくるかな」というリミットなので、完成してメールで送って帰り支度をしていると、先方から受け取りの返信がきて、あちらも仕事中なのだなとわかる。お互いに相手のペースを読みながら仕事をしているわけで、読み通りであると安心するし信頼も高まる。
自分の仕事としては徹夜はしない主義で、年に2-3回しか徹夜にはならないのだが、規格の委員会のワーキンググループでは時々「エンドレス」というのがあった。20年ほど前のことだが、どこかの企業の研修施設などを借りて、金曜の夜に集まって、日曜日の昼頃解散する。たいていは国際会議対策として会議の直前に行われた。その後インターネットの時代になって、紙の資料が廃止されて、ほとんどの資料はどこかのサーバにあるように変わり、お互いの資料を持ち寄るリアルな集いはなくなっていった。紙の資料の時代には、皆が手提げ紙袋にコピーやプリントしたものを沢山詰め込んで移動していたのがなくなったわけだから、コピヤ・プリンタの用途も大分変ったのではないかと思う。しかしネットでは「同じ釜の飯を喰った」感というのもなくなってしまった気がする。
執筆・編集の仕事に関しては、自分が編集側にまわることもあったし、規格の会議でも報告書や単行本も作ったりして、両者とも似たような仕事であったし、これに関わっている人々は共通点が多かった。共同作業でありながら、個々の分担は独立していて、自己管理能力とチームワークの両方が必要になる。
ところがネットワークが発達するとチームワークの方は対人的な接触が減ってネットに比重がいってしまうので、自己管理能力が中心になってしまう。両者は実は補い合う要素があって、自己管理の限界をチームワークで解決するというのもミーティングをしてて感じたところである。遅れそうな人の負荷を事前に別の人に回すことで、全体のスケジュールが狂わないようにできるのである。
これは一種の教育プロセスにもなっていて、こういうチームワークの中で経験の少ない人も周囲に助けられながら一人前になっていく。ところがネットの共同作業はそういう助け合いの余裕が欠けるのではないかという危惧がある。つまりネットで共同作業をするとなると、最初から安心して作業できるメンバーで組まざるを得ない面があった。
eLearningにも同じような悩みがあり、どうしてもネットの自習となると孤立してしまうので、よほど自己管理能力が高くないと挫折しやすいのである。だからネット上でサポートする工夫というのがいろいろ考えられているが、先生から生徒に対してできることには限りがあって、むしろ一緒に学んでいる者同士がお互いを気遣いあうような要素が求められ、それなはなかなかシステムにはなっていないのが現状ではないだろうか。
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