投稿日: Apr 14, 2012 3:4:7 AM
どこから手をつけるべきかと思う方へ
一昨年に『コトラーのマーケティング3.0 ソーシャル・メディア時代の新法則』が出版されて一時話題になったが、その後どのように扱われているのだろうか? マーケティング2.0ではソーシャルメディアに生活者が書き込むことで企業にフィードバックすることに対応するというストーリーがあった。これは従来のマーケティングの延長で、製品やサービスの提供側が顧客満足を高める方向で企業間競争がされるモデルである。しかしマーケティングはそこに留まらないというのがマーケティング3.0であって、生活者は受身の存在ではなくなり、マーケティングする側が生活者をコントロールするのではなく、生活者の集合知と企業が協働するようになるという。そういう方向はあるとは思うが、生活者の集合知云々はまだ観測できる状態ではない。今後BigData処理が容易になれば手がつけられるかもしれない。
ところで今はマーケティング2.0になっているのだろうか? 日本の企業はWebメールやSNS禁止のところもあり、2.0どころではないし、そもそもマスマーケティングの1.0すら不十分な会社も多いだろう。そう考えるとマーケティング理論がどうかよりも、企業と顧客あるいは潜在顧客との関係をどのようにかして把握することが出発点であるように思える。つまり新しいマーケティング手法によって顧客をコントロールしようという考えでは空回りすることは目に見えている。今日のメディアの状況からすると、企業や製品というのは水槽の中の魚のように観察されている(あるいは無視されている)ので、水槽の中の魚が観衆をコントロールしようというのは笑止千万なわけだ。
何度も書いているが世の中で大量生産される製品はなくならないし、マスマーケティングの有効性もなくならないので、マーケティング1.0を否定することはないのだが、それだけでは足りないという局面が増えている。しかしその部分は今まで広告代理店に丸投げしていたようなやり方ではできずに、企業側が直接分担すべきところが多い。つまり企業の担当者が代理店に囲われた形では一向に2.0も3.0も有り得ないと思える。そこでは「王様は裸だ」という意見はフィルターされて王様には届かなくなる。日本の家電もコンピュータも自分たちが考える「いい製品だろう」というのと、使う人の評価が結びつかなくなって滅びつつあるように思える。
各企業は個別の製品に対して誰がどう関心をもって評価しているかという本当のところをもっと知る必要がある。これは時々刻々変化するし、少なくとも各季節で変わるものだろう。従来F1層は、M1層は云々という大まかなプロフィールで生活者とのマッチングを考えようというのは無理があったし、そのギャップを埋める方法は今のネット時代になってはいろいろ増えている。この敷居の低くなったコミュニケーションのデータを活用しない手は無い。なぜならマーケティングは外部の専門家に任せなくてもネットを介したビジネスのプロセスには埋め込めるところが出てきたからである。
関連セミナー 『今、TVを見ているのは誰だ』1万人調査データでフォーカスする顧客行動 2012年4月25日(水)