投稿日: Jun 13, 2012 1:32:19 AM
出版もコンピュータ業界のようになるかと思う方へ
1980年代に印刷業界は情報加工産業であるとか情報処理業になろうというムーブメントがあって、その後20年にわたって業界ビジョンには必ずそのようなことが書かれていた。それは世の中全体で情報をコンピュータで扱うようにどんどん変化していったことを考えると、ビジョンのとうりになったともいえるが、世の中全体の情報化を印刷産業が先導したかどうかは怪しい。初期の高額なコンピュータ設備が必要な時には、文字入力でさえ漢字情報処理センターという専門の会社が必要であったが、それは1980年代半ばまでで、作業としてはデータベースやタグづけに焦点が移り、情報処理としてはアプリケーション開発が主眼になっていったので、印刷業界が前面に出ることはなかった。
それでも印刷業よりも情報処理業を名乗ったほうが設備の償却期間が短いので、情報処理で登記したり子会社を作る印刷業者はかなりあった。それによって今日ではホームページ作りのサービスをするようになっている。実はここにはネジレがあって、最初は電子出版が狙いでコンピュータ化を進めた印刷会社が多かったのだが、得意先である出版社は文化の担い手であるという姿勢の人が多く、情報産業としてビジネスを伸ばすという方向性がなかなか出なかったので、印刷業と出版業が二人三脚で情報化するというアテは外れた。
実際には出版の情報化はどんどん進んで、リクルートのような情報誌や教育市場などで、出版コンテンツを使った多くの情報ビジネスが生まれた。そこが今日では情報加工をする印刷業の顧客になっているのである。今日のモバイルの時代になってケータイ小説が登場したのが既存の出版以外からであったように、既存のコンテンツが情報化IT化するのではなく、IT化の流れの中にコンテンツビジネスが成長していくのである。というようなパラダイムシフトを意識しなければ電子出版はとらえられないのだ。
コンピュータの世界が、ホスト/ワークステーション/PCとダウンサイジングして、今はそれらのコンテンツやアプリがネット上で分解されていき、サービスとして組み立てなおされつつある。これと同じようなオープン化による分解と再構築がパブリッシングでも進行してきたし、これからそれが大衆的に広く受け入れられようとしている。それの典型がeBookであって、「黒船」がやってくるとか、今年が「元年」だからとか、補助金が付くから、などの理由で動き出すものではないのである。
コンピュータも通信も情報処理や伝達のオープン化に合わせて、出版を再構築するという主旨で、オープン・パブリッシング・フォーラムをはじめる準備をしています。その第1弾として下記のセミナーを開催します。
Ebook2.0 Forumと共同開催
2012年6月20日(水)『出版ビジネスをサービス指向で再構築する』
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