投稿日: Nov 16, 2011 12:37:33 AM
クラウドの足音が近づいていると思う方へ
年末になると家庭用のインクジェットプリンタが売れる季節になる。年賀状のために1年ぶりにプリンタを出してみると、うまく印刷できなくて、格闘の末に新しいプリンタを買うところも多いだろう。インクジェットプリンタは日常的にコンスタントに使っている方が調子が整うが、永い間放置するとヘッドやインクタンクの調子が狂って、バランスさせるのに多くのインクや紙を消費してしまう。たまに1枚出力するように用途には向いていないので、家庭用FAXのように頻度が少ないが確実にプリントできなければならないものは熱転写などが使われる。
デジカメの普及で、趣味できれいなカラープリントを日常的に行う人もいるだろうが、sohoでもなければインクジェットプリンタの面倒を見なければならないくらいなら、コンビニとか外部のサービスを必要な時に使うほうが合理的かもしれない。すでに写真屋・はんこ屋などプロのサービス以外にも、人の行き来するところでプリントサービスが増えていく可能性はある。つまりコンシュマー向けのグラフィック装置の限界と、それを補うグラフィックサービスのセミプロ分野の伸張が起こりつつある。これはフォトブックとかアルバム、フレーム付写真などの加工を伴う専門的なものと、ハガキやプレゼン、ドキュメントなど一般的なものに分かれるが、いずれにしても従来のようなSDカードやUSBやCDでデータを受け渡しをするのではなく、印刷対象はクラウド化されるだろう。逆にグラフィック加工のクラウド化の進展が、プリントサービスのセミプロ化を進めるともいえる。
クラウド化は画像や素材の保管に使われ始めていて、デジカメやスマホといったデバイス自体には画像を保存しない方向だろう。今日のメガピクセルの画像は、作ろうとするものがフォトブックとか、CD・DVDのラベルとか、ポスターとか何であっても使えるマスターなので、これからは画像や素材を加工する楽しさをサービスとして提供することが増えるだろう。現状の加工ソフトの代表であるAdobeパッケージ製品では一般人には敷居が高く、MSOfficeとかカメラやプリンタのオマケソフトやフリーウェアが使われるが、これらはもう一皮むける必要がある。そのためにオープン化とかユーザインタフェースの改善がされて、次にクラウド化するはずであるが、意外に進んでいない。Adobeも利用料金体系を変えてきてはいるが、それはやはり一般人が使えるものではない。
しかしAdobeの敷居の高さは現在のサービス業者のビジネスを守っている壁でもあるので、素材を加工・編集するところがクラウド化していくと、業態としては根本的な変革を余儀なくされるだろう。しかもクラウド化は日本という国境を越えるサービスになるので、日本国内でオープンにしないように頑張っても、頑張りきれるものではない。Adobeが利用体系を変えなければならない時期なので、むしろ日本のこれまでのグラフィックソフトのノウハウを武器にして、世界にサービスを提供しようくらいのところが出てきて欲しいと思う。