投稿日: Nov 28, 2014 1:31:13 AM
日本は書籍の発行点数が異常に多い国であり、それ自体は良い点もあるのだろうが、出版社は自分の首を絞めているような面がある。やはり点数を絞っても長く売れる本を出す方が出版社としては基盤の強化になる。しかしお金のまわり方という点では自転車操業のようになってしまう。前職では団体の中の出版部門をやっていたこともあって、その立場の方が点数を絞ってエッセンシャルな本を出すことに専念しやすかった。つまり企業や団体は、その存在理由にかかわるコンテンツというものがあって、それは滅多に変わりはしない。その意味では情報発信の拠点となりえる。
ただし編集作業というのは企業や団体に必ずしも備わっているものではないから、出版社が編集と流通を手伝えば、双方ともにメリットがあると思う。出版社に無理やり本を「発案」とか「ひねり出し」てもらわなくても、出版という活動は無くなりはしない。既存の出版社を維持させることが出版文化であるというのは言い過ぎだろう。もっと情報の川上側での自主的な出版活動が活性化されていないと、出版社にとっても良質のコンテンツとか大衆受けするコンテンツを見つけるのが困難で、自転車操業から抜け出せないのではないかと思う。
昨年の記事で『地域おこしは人材から』に、練馬から西東京にまたがる「下野谷(したのや)遺跡公園」のことを書いた。旧石器から縄文時代までの遺跡の積み重なりで、集落規模も大きく、現在わかっているだけでも600戸ほどの竪穴住居跡が見つかっている。上の写真は西東京市が縄文土器の展示をした時のもので、まるで鉢植えの鉢のようにムキダシで並べられている。2年に1度くらいのペースで地元住民向けのイベントをしているのだろうか?練馬区の側でも何年に1度か同様のイベントがある。両方合わせると日本国内でも1位か2位かという規模の遺跡なのに極めて情報が少ない。
先日大型書店に行く機会があったので、下野谷遺跡に関する本はあるかどうか探してみたが、やはりなかった。遺跡としてはもう20年前くらいから知られているのに出版されているものはないらしい。遺跡調査や発掘は教育委員会のテリトリーなので、そこには何らかあるはずだが、一般の人の目に触れるものではない。しかも練馬区と西東京市にまたがっているとなると、関心のある人は両方を調べなければならない。あと10年もすれば何がしかの解説書が出るかもしれないが、今興味をもっている人には、調査やイベントなどが行われるその都度の中間報告でも知りたいはずだ。
記事『コンテンツのデフレ化』では、ドワンゴの川上氏が100円コンテンツを嘆いていたことを採りあげたが、企業や団体のコンテンツが日の目を見る機会としては、デジタル+ネットでの100円コンテンツはよい方法であろうと思う。
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