投稿日: Jan 11, 2014 1:53:5 AM
体制化したモデルに代わって
エンタメはいったんヒットするとプロモーションにそれほど金をかけなくても何十万~何百万の数がさばけるので、どうしても投機的なビジネスになりがちである。それはまず産業革命で製紙・印刷が発達し紙媒体によるコンテンツビジネス(新聞・出版など)を作り上げていった。江戸時代でも瓦版のような紙媒体は存在したが、新聞はそういった延長ではなく大量印刷に乗って大ビジネスになった。出版も新聞の広報力とあいまって大きなビジネスとなった。
しかし不思議なことに新聞や出版のビジネスモデルは今もその頃と大きく変わらない。Amazonを黒船に例えるほど、変化が少なかった世界である。
20世紀になってレコードや映画が産業化していったが、この場合はプロモーションや配給がもっと巧妙になって、世界を相手にするようになったのと、タレント・クリエータの育成とか、マーケティング活動とか、スタジオ・制作技術開発とかまるで工場でコンテンツを生産するがごとく総合的に発達させてきた。
これは主にアメリカでの出来事だが、レコードの場合はラジオの音楽番組とジュークボックス(参考 コンテンツビジネスの多様性)配給網と関係したビジネスモデルが作られた。原始的には記事『コンテンツの出世コース』に書いたローカルな評価を得て外の世界に広げていく形で拡販するのものだった。アメリカについでイギリスも世界にビジネスを広げた。
このジュークボックス・アーケードゲーム・映画の木戸銭など小銭を各地から集めるビジネスモデルはユダヤ系のネットワークによって広まったといわれている。これらとハリウッドが高度に発達させたコンテンツ工場のような仕組みが、連続して世界にヒットを提供するようなビジネスモデルを作り上げてきた。
それは大変複雑なものになったし、その枠組みの中に入れてもらえるかもらえないかによって、そのコンテンツの命運が左右されるほどになってしまった。つまりそのビジネスモデルは体制化したということである。
しかし一方でクラッシック・古典や特定分野のようにヒットはなさそうだが一定量はコンスタントに売れる。知り合いがやっていたCDレーベルの場合に、日本で売れるのは一般受けする黒人音楽は何千という数になるのだろうが、マニア向けの戦前のbluesのCDになると、1タイトルあたり300枚くらいしか出ないといっていた。しかしそういう音楽ジャンルは何百もあるので、ロングテールを束ねるビジネスをしているわけである。
こういったロングテール分野がソーシャルメディアの時代に変化するとか、場合によっては化けるのではないかとも言われてきたが、まだその兆しは見えない。電子書籍ではAmazonKindleのKDPのようにプラットフォーム化は着手された。このように既存の業界以外からロングテールを活かす新たなビジネスモデルがでてくることになるのだろう。
ネットを利用しているかどうかを問題にするのではなく、複雑に体制化したビジネスモデルが手を出せなくなった分野があるので、そこを突くコンテンツビジネスにもっとチャレンジする人が出てもいいように思う。