投稿日: Jun 22, 2015 1:36:56 AM
昨年書いた記事『電子出版EXPOほぼ消滅』は更に進行して、今年はイベント案内(7/1-4)がもっと簡素なものとなってしまった。大日本印刷、凸版印刷、共同印刷という大手が出展社に出ていないのかと思ったら、大日本印刷だけ東京国際ブックフェアの方に顔を出していた。これは出版流通にいろいろ資本参加している母屋だから当然だろうが、関連業者が義理で電子出版EXPOに出展することは激減したといってもよい。
特に電子書籍系セミナーは無くなったといってもよいほどで、某機構系の講演者も立たないし、Adobeなども展示も含めてほぼ形跡がない。しかし現実には電子書籍はEPUB3で当たり前に作られるようになったわけで、ビジネスの状況は電子出版EXPOとは断絶しているといってもいい。電子書籍の出版や制作に関っている人の問題意識と、このイベントの間には相当大きなズレが感じられる。
それは自分が前職に居た時なら、コンテンツ管理や権利管理、利益配分などでいくつかのテーマを設定しただろうなと思うからである。要するにデジタルパブリッシングを前に進めるための根本的な問題に立ち向かうかどうかである。目下のビジネスから考えるとマーケティングがテーマのようにも思えるが、それには流通や書店からの情報が少なすぎて、議論にはならない。またセミナーでの作家の登場も激減し、この分野は大衆的な興味の対象になるものではなく、BtoBの課題が中心になってきていることがわかる。
ネットを見ていると電子出版系の話題も時々はあるように思えるが、そういったニュースやトピックスだけを追いかけていても問題に立ち向かうことにはならない。今は自炊もセルフパブリッシングも話題に上がっていないが、そこに問題がなくなったわけではないことを考えればわかる。こういった問題意識の欠如がもたらすものは、大きな力に流される受け身の業界に留まることである。大きな力とは黒船であったり、大企業であったり、技術革新であったり、法務であったり、いろんな方面から迫ってくる。それを総合的に受け止めて舵取りする会社がリーダーになるのだろう。
このままでいけば、KADOKAWAさんに頑張ってもらって、そこで整備された道をあとからついていく日本の出版界になってしまうのだろう。KADOKAWAについていっても意味がない小出版社は、自分で努力しなければならないところが多いだろうが、そういう会社の方が電子出版はやりがいがあるかもしれない。
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