投稿日: Nov 27, 2012 1:46:38 PM
可能性はいろいろあると思う方へ
11月の研究会「電子書籍の次ステップと近未来展望」は、AmazonやKoboへの対応の先の、オープン化するパブリッシング環境において、どのような電子出版の可能性があるのか、をテーマにを行った。電子書籍というと紙の本を移行したものというイメージがあるが、データの展開という点ではアプリであったりサービスであったりするので、eBookという呼び名の方が電子出版的にも使えて便利そうであった。最後にいくつかの方向に絞ってディスカッションをした。デジタルであんなことが出来る、こんなことが出来るという技術先行の話は沈静化しつつあるかもしれない。それよりもどこかで先行事例ができたものが、普遍化するかどうかということで以下6項目を検討してみた。
・会員制 - 顧客がはっきりしている場合。月間いくらかの定額で読み放題。
・備蓄型 - 辞書のようなもの。すでに180ほどあるという。
・ポータル - 出版コンテンツを核に、ある専門分野の物販やサービスを集めたもの。
・グローバリゼーション - 翻訳出版のライセンスに代わってマルチリンガルな出版
・自主出版 - 出版社を通さない個人出版
・出版プラットフォーム - 販売方法あるいは出版社サポートの向上
会員制
もっとも古い電子出版モデルでもあり、紙のコンテンツを溜め込んだものがそのまま活かせる。しかしただデータベースの全文検索のようなものを置いておくだけではなく、使い方のナビゲーションを上手に作らないと利用しやすくならない。このナビゲーションは要約の編集なども使える。データベース連携では異業種タイアップも必要。
備蓄型
電子辞書の複数の辞書会社の企業連合が必要。そのコーディネートが難しい。仮想市場は大きいが、辞書のようなガジェット型のものはスマホの普及で難しくなり、売り上げが立て難い。個別アプリで売るのは難しい。既存の辞書は飽和。利用分野でこういう場合はこれが無ければならないという動機づけができば、何かにバンドルできる可能性はある。
ポータル
ゴルフダイジェストオンラインなど、雑誌から通販のような形で物販や予約などの経済活動に発展するものがある。売り上げが見込まれれば集客のためにコンテンツを使うので、コンテンツはタダの場合もある。雑誌をそのまま使うことは権利関係などで難しいが、雑誌は情報集めに役立つ。広告モデルの電子雑誌は難しい。
グロバリゼーション
日本以外では世界的メディア企業グループがマスマーケティングを支配している。それ以外に海外の版元が日本語訳テキストを入手して日本に売るようなことが始まる。Koboもカナダの出版社が日本語を売っていることになる。逆に日本の版元が海外版を作るようになるのだろうか?
自主出版
誰でもAmazonなどで売れるが、超ロングテールなので一般読者のとっつきは悪い。自主出版が認知されるには、やはりどこかでレビューされないといけない。そういったサイトやサービスやコミュニティの登場や進展とともに成果が上がるようになるだろう。
出版プラットフォーム
Amazonは販促活動のためのいろいろなサービス化をしていて、そこでも収益化する。出版ビジネスを広くサポートするようになるだろうが、今のオンライン書店はまだ店舗で言えば平積みだけしか見えないようなもので、あとは検索に頼っている。もっと読者の視線の買場を作り出すことが最大の課題。
こういった可能性と課題をこれからもう少し深堀りしていく予定である。多くの「難しい」は、紙のモデルからの引継ぎが困難の理由でもあるようだ。むしろ別の組織で自由なボーンデジタルにチャレンジする方が発想も柔軟になるのかもしれない。