投稿日: Dec 11, 2013 12:48:19 AM
ハードルは高い
バブル崩壊の頃までは日本の有名企業も含めて殆どの職場は、今で言う「ブラック企業」だったかもしれないし、「ブラック」を指導する企業コンサルタントもいっぱいあった。そういうコンサルタントの人は今は何をしているのだろう。ひょっとしてコンプライアンスの指導をしているかもしれない。このテンプレートを埋めたら認証が通りますよ、というのを何百万円かで売りつけている会社がよくある。何回か面談して企業の資料に目を通して個別指導をするにしても、原価は数十万円もしないだろうという作業である。
よく現在がコンプライアンス過剰といわれるのは、コンプライアンス対策が社内で真剣に検討されることなく、テンプレートで行っていて、全然社内の人たちには浸透していないから起こることだ。つまりコンプライアンスが現実を離れて教条的になり過ぎていて、顧客や取引先など実際の相手の事情を理解することなく対応を決めざるを得ない状況になっているといえる。
本来なら現実に起こる事象に対して知恵を使って解決した経験を積み重ねることでコンプライアンスのガイドが出来るべきところを、逆のプロセスを当てはめているともいえる。
もし企業なり組織が、本当に皆が知恵を絞って経験を積み重ねられるように社内で働く人の意識のベクトルを揃えたければ、それはトップから役員層、管理者層が共通の理念を掲げるようになっていなければならないが、そういう宗教がかったような企業が極めて少ないのが日本である。「宗教がかった」というのは、どこにも明文化されていない共通認識をもたなければならないからで、それはトップの独善であったり、実際の宗教とか宗教がかったモラルであったりする。
Steve Jobs の場合は独善的であったが、デルコンピュータの Michael Dell はユダヤ人なので宗教がかったモラルによって経営にスジを通したであろう。東日本大震災の時には会社と従業員から合計100万ドルの寄付が日本に寄せられたし、かつてエイズの寄付つきパソコンを売っていた事もあった。デル本人も母校の大学に多額の寄付をしている。寄付の金額にそれほど意味があるとは思わないが、事業が順調であれば、いわゆるノブリスオブリッジに相当することを金に換えて実践するのがアメリカ流なのだろう。
アメリカで肥満の原因のひとつとして取りざたされるマクドナルドも、そうなった一因は経済的弱者への食事提供というのが経営の根本にあったように思う。創始者夫婦は救世軍の奉仕活動をずっと行っていたし、未亡人の遺産の8割の1500億円ほどが救世軍に寄付された話は有名である。
日本ではブラック企業で働くのが嫌だから自分たちだけのソーシャルビジネスをしたいという若者が出てきているが、それにはかなりの無理があるように思う。既存企業の社会活動を活性化させることは困難なようだけれども、本来の道ではないか。