投稿日: Dec 09, 2013 1:37:27 AM
なぜ中長期を考えなければならないのか
電子書籍のビジネスの将来を考えるには、紙の本のように作りっぱなしで後はステークホルダに任せるビジネスから脱却して、バリューチェーン全域にわってのモデル、つまりエコシステムのようなもので、長続きして収穫逓増していくようなモデルを描けるかどうかが鍵になると考えて、2012年度は電子出版再構築研究会を行ってきたのだが、そもそも出版の電子化に関するトピックスは「垂直統合か、水平分業か」といったレベルの話が多すぎて、もっと全体を考えるところまでにはいかなかった。まあ長期のことを考えることは今のビジネスに直接貢献しないことも明白なのだが…
個々の事業者に目下の課題があることはわかるが、その範囲の中のことであっても、誰と組むのかという話になると、やはり中長期的にその会社が何をしているのかが気になるし、自分の会社の中長期のスタンスも相手に示す必要は出てくる。
今の「垂直統合か、水平分業か」という話は、あくまで提供側、つまりギョーカイがどうなるかの視点でしかなく、利用者には関係ない。利用者視点で考えるならば、いろんな提供者のいろんなメディアの複合利用のテーマは避けて通れない。そのことを記事『利用者視点の電子出版』で少しふれたが、実際にも単なる紙の書籍の置き換えに近いKindle専用機よりもタブレットの方が売れ行きがよいことも複合利用が必須なことを暗示している。
利用者側の複合利用がイメージし難いことが、従来の本の売れ方と異なる電子書籍の爆発的拡大をイメージし難いことにつながっていると思う。つまり今まででもニュースやトピックス関連でWebのアクセスが急に伸びることを経験している人は、コンテンツ販売がネットのビジネスになった途端に、モノの流通問題が無くなることで、瞬間的に売れることはイメージしやすい。これは今までの紙の本でも文学賞の発表などがあると一挙に在庫一掃になり、さて刷り増しはいかほどにするか悩んだこととにているが、電子書籍では刷り増しの心配がなくなる。
こんな例にあてはまる出版はそうないと思うが、いずれにせよ出版には多様性があって、長年使ってボロボロになるまで見る本と、さっと読んで終わりの本があったり、文芸・小説、実用書、学習用などなど目的ごとに利用のされ方が異なる。ところが従来のデジタルメディアの話は、ページを開いた時の紙との比較といったかなり限定的な話が多かった。
また目的ごとに、探す+見つける+手に入れる+読む・BookMark・Memo+保管する+再利用する、などのライフサイクル上の特徴もある。
さらにデジタルの複合利用となると、text comic picture video audio といったアナログメディアの時の違いを超えた利用になる。
つまりコンテンツ提供側は自分のサービスが今までどんなことをしていたのかを棚卸しして、デジタル時代の新たなサービスを設計し、現状の不足分を補うべくふさわしいパートナーと組むことなしには前へ進まないと思うのだが…。