投稿日: Aug 27, 2010 11:26:29 PM
ビジネスとメディアの関係がピンとこない方へ
アナログとデジタルの違いは何かというと、デジタルはカウントできることだと習ったような気がする。実際にWebでの広告でもPVとかクリックの実数をカウントできる。しかしそのカウントがどういう意味を持つのかはそれだけでは判断できず、コンバージョンがどうのとか他の追跡手法でまたカウントをする。それと購入というクロージングがどう関係するのかは、カウントできるものもあれば、エンゲージメントという別の評価尺度を持ち出さねば説明できないところもある。このようにやったことの反応の数値化と関係性分析などの積み重ねで仕事の改善をするのが今日のメディアビジネスである。日本でもリクルートやコールセンターではこういうことの経験者はいっぱいいただろう。
アメリカに広告学というものがあるとすると、一生懸命アンケートや統計で数字を集めて関係性の仮説をたてて、起こった事象の根拠説明をしようとしていたことではなかろうか? つまり過去のデータや知見と、仮説構築、モニタ調査・分析などに長けているのがマーケティングの専門家で、それは事業の現場とは別のところに居て、事業側からするとその人達のコンサルを受けるような関係だったと思う。私はこの10年くらい、eBayやさまざまなECの試行錯誤と成長(消えてなくなったビジネスも多いが)を観察してきて、こういったマーケティングの専門家の仕事が、ECのメカニズムの中に徐々に組み込まれ来たことを感じる。『お勧め』と一口にいってもクロスセル・アップセルのロジックはやはりマーケティングのセオリから来ていて、それをベースに個々の販売局面に応じて過去の知見をどうデジタル・ネット上で再構築するかというのが努力のしどころで、万能のOneToOneを目指してECをやってきたのではない。またEC=自動販売機ではない。
いずれにせよアナログとデジタルの違いは、アナログ時代にはマーケッティングと事業が別プロセスであったのが、ECの中では両者がリンクして、しかもリアルタイムに動くメカニズムができることである。Amazonでも新本は切れているが中古ならありますよ、というふうに異なる事業がリンクして機能して「買い場(shoppers)」としては最強のものになる。すべてがそこまで行かないまでも、メディアを使ったマーケティングとECはセットで設計から運営までするべきものとなった。特殊な例ではなく一般的にいってもこれは以下の3重のPDCAをまわすことになる。Webを作ってSEOとかは一番内側の「1」のループである。その外側の「2」はクロスメディア的にいろんな媒体の使い分けでプロモーションをするループである。外側の「3」はカスタマサポートやソーシャルメディアでの反応をフィードバックして、次の販売計画、プロモーション、メディア制作に降ろしていくところである。
こういった3重のPDCAメカニズムが出来上がっていることを前提にしないと、ソーシャルメディアのようなアンコントローラブルなものからポジティブな要素をくみ上げて、内側の「2」や「1」のループの助けにすることはできない。ソーシャルがモノを売ってくれることはあり得ないのだから、ソーシャル対応とはこれらPDCAを如何にリアルタイムにまわせるようなシステム連携を作り上げ、チューンニングしていけるかであろう。電子書籍のビジネスだってそうだよ、というと、今日本でプラットフォームをやろうとしているところは引いてしまうかもしれない気もする。でも黒船たちはこういうことが当たり前なのだ。