投稿日: Nov 11, 2010 11:31:12 PM
チャンス到来を待つ方へ
日本からもチームラボや頓智ドットなど世界に向けて仕事をしそうな会社が出てきたことは大きな変化だ。今までの日本のコンピュータ産業は大企業中心の営業型かスパコンかといったようなところが中心にあり、あとは中小零細のSIerやコーディングをする下請け構造があった。大手各社は研究所をもってそれなりの人材を揃えていた。会社の羽振りがよかった時代は自由な研究ができても、次第に現業寄りのことが求められるようになり、せっかくの才能を海外の先行モデルの物真似とか、顧客のソリューション開発とかにしか使っていなかったかもしれない。そんな中にいてオリジナルなことを考える人材で離れていった人は多く居るだろう。コンピュータに携わることで、夢と現実のギャップの大きさを感じるというのが従来であった。
当然アメリカでもメインフレームの世界は似たようなものであろうが、優秀な人がベンチャー企業を興すことも盛んで、そのエネルギーがアメリカのグローバル戦略を推し進める力にもなっていた。アメリカの技術が世界で使われるようになって、また発展途上国にソフトウェアがアウトソーシングされるようになって、世界中のベンチャースピリットを持った人がアメリカでスタートアップするようになった。つまりアメリカは世界から力を集めてグローバル戦略を推し進めるようになった。しかし発展途上国のように国内にITビジネスが不足している場合はアメリカをベースに仕事をするしかないが、自国に市場がある日本やEUの場合は自国ベースで世界に向けた仕事ができるはずで、そうなることの方が望ましい。冒頭のことはその状態に近づくのではないかという兆しである。
記事「二番煎じがない世界に」では、物的な有限個の商品と異なって、ソフトでは二番煎じの出番は無くなってしまうことを書いた。ソフトウェア化は物的商品流通をベースにしたビジネスのパラダイムをぶち壊すので、ネットでのサービスもオリジナルな強みを持たなければグローバルな競争に負けてしまう。かつてAdobeがフォントフォーマットやPostScriptについて非公開なところがあったのに対して、AppleやMSが対抗してTrueTypeやRIPを作ろうとしたことがあった。ビルゲイツはRIP担当で互換RIPの会社を買収したがそれを製品にはしなかった。人の後追いの互換開発に反対だったからだ。つまり競争のためにリソースを割くことが最重要であり、またどんどん技術が変化する中では互換品はビジネスで成功しないと考えたからだ。後にUnicodeでアメリカ企業は団結したが、互換部分は非競争分野にする考えになり、HTML、XML、Javaの時代に入っていった。アメリカは無駄な開発がさっさと終焉するということでロスを少なくしている。
日本の場合には開発案件の仕分けが不十分で、競争力にならないことも売り上げを嵩上げするためにやっているように思える。それも食っていくために必要なことは充分承知だが、将来に夢を持って集まっている会社ならば、近未来から逆算してオリジナルな努力を積み重ねるような「仕込」をしておくことは重要で、その「仕込」があればどこかでビジネス化のチャンスがつかめるかもしれない。アイディアが現実のものとなるにはタイミングが重要である。ビジネスの諸条件が揃っていなにのに、全部自分の力で用意するのは経費がかかりすぎて成功しない。ある程度目的を共有して、役割分担してくれるplayerが周囲に居ないことには物事は進まないが、そういったコラボレーションの中でユニークな位置を占めるにはそれまで培ったオリジナリティが役に立つことになるだろう。
日本人のこだわりや努力が、デジタルメディアの世界で夢を育んで、ビジネスが現実化するようになってもらいたいので、組織は才能の無駄使いをしないようにならなければならない。