投稿日: Aug 15, 2014 12:59:19 AM
第2次世界大戦でも太平洋戦争でも大規模な戦争が起こった理由を簡単に説明することはできない。最近は日本は悪くはなかったとか、日本は罠にはまって陥れられたという論調もある。これは当初からあったが、それだけでは戦争を避けるタシにはならないだろう。日本が負けた以上は日本に足りないところがあったわけで、今でも世界には紛争地がいくつもあることを考えると、地道に力をつけていかなければならない。何が足りないかというと、やはり世界の情報で、各国の内政・経済力・軍事力・情報力・リーダーに関する情報その他社会を構成している情報をどれだけ分析できるかにかかっていて、兵器の数や兵隊の数を揃えれば国威が発揮できるわけではない。
イギリスは世界の軍事研究のメッカだから、有名な007のような物語も生まれるわけで、そういう世界を股にかけた情報力がイギリスの資産でもあり、国際政治を考える人も多くなった。前職でアジア諸国のフォーラムというのを毎年行っていて、順繰りに各国にホストしてもらっていたのだが、日本に住んでいると意外にアジア各国の実情は伝わってこないものだと思った。そして共通項として日本がどうのこうのよりも、アジア経済圏での中国の去就を一番気にしている。それによって各国の戦略戦術が左右されてしまうのである。
とするとアジアでは中国情報の交換をすることが重要である。例えば貿易の決済で中国の元は使わないという国があった。その理由は紙幣としての元がどれだけ発行されているかつかめないからだという。元の印刷は一か所ではなく、いくつかの省に分散されていて、勝手に刷っているのではないかと勘ぐっていた。
マレーシア航空機がインド洋で行方不明になった時の捜査で、中国には軍事衛星が10以上あることが分かった。これは防空識別圏の再設定や、おそらく内陸部の国境警備などにも使われているのだろう。中国のインターネット上の監視とか内国のコントロールとか、サイバー攻撃とかも話題になる。中国も刻々と変化し続けていて、中国はこうだと決めつけることは難しくなっている。アジア各国は中国はむしろ今のまま変わってもらいたくないと考えているがそれは無理だ。
欧米の人からすると、日本が中心となって中国以外のアジアの国が連携を強めればよいということを時々いう。いわば東アジア共栄圏のような構想であるが、今の日本にそれをまとめる力があるのだろうか? 前職のアジアフォーラムの際には、日本が旗振りになるといろいろ勘ぐられるから、活動計画をなるべく他の国の自主的な話し合いに委ねていた。だがそれはまとまり難い。例えば中国問題については中国との親密さが各国それぞれ違うからである。だから東アジアの国をまとめるとすると、個別の利害ではなく、共通の理念を掲げなければならなくなるのである。そういうことを日本が提案できるようになれればよいが、日本も個別利害で動いていることが見え透いていると、アジアでの求心力はない。戦後の日本のアジア政策としては空振りのODAがすぐに思い当たるが、一番必要なのはアジアを十分理解した日本人を増やすことではないか。それが国際関係の基礎になる。
スウィングバイの海野恵一氏のグローバルネゴシエーター養成のことを記事『日本のリーダーシップに欠けるもの』では取り上げたが、こういう人材を育成する大学の学科が必要であると思う。戦後の大学教育ではすでに国際何々学というのが各地の大学に設置されるようになったが、それをもっと現場で実践できるようにするための経験を若者にさせる必要があるのではないだろうか?
私は007のアジア版をまず行うべきで、各国に出かけての社会学などをする若者が増えることが必要であろうと思う。
Top → Articles デジタルメディアビジネスの記事 過去記事→Archive