投稿日: Nov 22, 2011 12:35:28 AM
社会的な役割を考えている方へ
この1年のソーシャルメディアの功績として、昨年末のチュニジアのジャスミン革命に続いて、1~2月のエジプト・ムバラク政権の崩壊、そして10月はリビア・カダフィ政権の崩壊と、まだ現在進行形のアラブ長期政権を揺るがす「アラブの春」が話題となった年であった。こういった動きには中国も神経を尖らせているのだろうが、デジタルメディアの本家でもあるアメリカにおいても反格差運動「オキュパイ・ウォールストリート(Occupy Wall Street)」に揺さぶられるということが起こっている。今までマスメディアで世論操作をしていた政権にとっては、ソーシャルメディアは厄介な存在になったのであろうが、それではソーシャルメディアが社会を良くするか、民衆の味方かというと、そう簡単には結論は出せない。
本来、社会の変革というのは、人々の意識の変革でもあり、変革できない人も居ることを考えると、たとえ制度を変えても、古い人が高齢化して力を失うまでの30-40年はかかることになる。アラブの春はちょうど為政者が高齢化して退出するタイミングでもあったわけで、中国やアメリカにはあてはまる話ではないだろう。アラブにはこれから新しい社会制度が必要なわけだが、それには意識改革に長い年月取り組んで行かなければならない。北アフリカは独立が早かったものの、中南部のアフリカは独立後何十年かかっても社会の安定は得られていない。果たしてこういったところにどれだけソーシャルメディアが役立つのか、まだまだ未知数である。
先日CNNの取材でエジプトの国境警備隊からみの報道をしていた。アフリカの難民がエジプト密入国をしようとやってくると、国境警備隊が銃撃して追い払う。国境の周りには死体が放置されている。それで埋葬のNPOというのがあって、死者の持ち物から宗教を推定して、相応しい方法で葬ってやる。ところが腹に縫い目のある死体がよくある。内臓が抜き取られているのである。これは国境周辺に住む部族とある「組織」がつるんでやっていることで、カイロでの臓器移植手術と関係している。カイロの病院から、どこかを通じてこの部族に臓器の注文がくると、ちゃんと保冷装置をもったこの部族の人が国境めがけてやってくる難民を捕まえて、臓器を抜き取ってカイロに送る。死体はそこらへんに捨てられる。臓器の値段は何十万円から何百万円だそうだ。
生活が豊かで医療も十分に受けられる中東やヨーロッパの人と、難民をうみだし続けているアフリカの隔たりは途方もなく大きく、しかもこの落差に依存している資源・エネルギー・農産物さまざまな産業があって、また臓器移植などもあって、先進国の生活を裏から支えている。こういった問題は「アラブの春」のようにアフリカ自身が解決すべき問題ではなく、先進国側も並行して意識改革や制度変更をしながら、アフリカの変革と歩調を合せていかなければならない。ソーシャルメディアは果たして先進国側の意識改革に役立つのだろうか? それとも野次馬に過ぎないのか?