投稿日: Jul 11, 2012 12:35:18 AM
漫然と電子書籍を並べてもなあ…と思う方へ
東京国際ブックフェア・電子出版EXPOの話題は、突き詰めると楽天Koboと凸版BookLiveになってしまう。読書端末Koboは実機に触れることができたが凸版の読書端末は透明ケースの中だった。いずれも価格帯も機能も似たものだろうし、すぐに新型になるだろうから、細かいことを今吟味しても仕方がない。それよりは価格設定が今回のポイントだろう。KindleFireやGoogleの新しい端末が200ドルでそこそこ立派なものとなっている今、モノクロの電子ペーパーの値段がどうなるかというところに結論が出たように思う。つまりコンテンツとは何の関係もなく、長時間読書向き文字用端末は数千円になるということだ。
この値段で端末を一気に普及させると電子書籍は売れるようになるのだろうか? 確かに何がしかの動機があれば端末を買うことに躊躇することはなくなるだろうが、紙の読書が画面の読書に変わることにはならないのではないか。むしろ端末が新しい利用法をたくさん作りだすようになるのではないか。それは一種の自炊の延長にあり、自炊が次第に進化してユーザが勝手にEPUB3を作り出すようになる可能性がある。もっとも利用者にとってはJPGでもPDFでもEPUB3でも何でもいいのだろうが、EPUB3を吐き出すワープロや編集システムが増えることと平行して、EPUB3読書端末の用途が広がるだろう。
たとえば印刷の歴史の講義をしようと思うと30年位前の本を引っ張り出さないとアナログな制作の文献がないのだが、それらはすでに絶版になっている。自分で持っている本でも図書館の本でも、研究・教育目的でコピーして使うことは大学で一般的に行われている。こういったところが自炊化するとコピーが減る。現状でもPDF化して学内で配信してPCで見てもらうような学校はあるが、iPadを学生に持たせて教材を配信しようという学校もボツボツ出てきている。iPadでもかまわないが、学生全員必携とするには、遊びの要素の少ないモノクロ電子ペーパー端末が安くて導入しやすいと判断される可能性もある。
もうドットブックもXMDFも終焉に向かいEPUB3だけがeBookフォーマットとして残ったようなものなので、おそらく青空文庫をEPUB3にすることなどはボランティアベースでも起こるだろう。ではKoboは売れるのか? もし楽天に営業部隊が居て、大学に限らず学校に向けて教材のある部分をeBook化して読書端末もバンドルで提供するならば、かなりの量がはけるかもしれない。この場合の端末はKoboでなくてもよいので、いずれ教材のディーラーがそのようなことは始めるであろうから、楽天は先行できるかどうかが重要だと思う。
元々10何年前のアメリカのeBookのコンセプトはそのようなもので、教科書会社を巻き込んで立ち上げようとしていたし、Appleも何度となく教育市場に色目を使っている。そんなところに数千円の端末の登場というのは、本当はすごいチャンスなのだが…
関連情報 2012年7月25日(水) 『出版のマーケティングを見直す 復刊ドットコム』