投稿日: Jan 18, 2013 12:52:58 AM
キュレータ論議はどこへ行ったと思う方へ
私は40年ほどアメリカ・ヨーロッパのオークション(やセットセール)を利用していて、当然1970年代はインターネットもファックスもないので、手紙でbidをしていて、頻繁にオークションする出品者でも2ヶ月くらいの期間が必要で、一般には年に3-4回くらいしか開催できなかった。この段階では今日のように誰でも気楽に参加できるものではなかったので、いわゆるマニア向けになっていた。私の場合はレコードの蒐集だったので、アメリカやイギリスの音楽雑誌の後ろの方にある3行広告でオークション(やセットセール)を見つけて、手紙を書いてリストを請求していた。
出品者はトレードショウで仕入れるとか車で倉庫に買い付けに廻って集めて、仕分けて値付けをする。掘り出し物を嗅ぎつけて高値を付けるとか、出品者がうっかり普通の値で出してしまったものをbidする方が掘り出し物であることを嗅ぎつけてオトクな買い物をするような、せめぎあいというか目利き比べのようなことをしていた。この時代はbidする側に一般のリスナーはいないので、超専門家か、いわゆるマニアがbidderであった。超専門家というのはレコードの価値を判断して値付けができるような人で、プライスリストのようなガイド本を出したりしていた。マニアというのはプライスリストを参考にしながらbidするような人だった。プライスリストというのは有名人と無名人の間の層を評価する目安であった。
レコードに関して言えば数十年前のものでも有名人と無名人の間のものは今日の再評価の対象になる。特にヨーロッパのDJさんたちはいまだに宝探しを続けていて、再評価されてヨーロッパのクラブでどんどんかかるようになると、今日のeBayのオークションなどでもそのレコードの値段は上がっていく。その人気の上がり方はインターネットのなかったかつてが年1.5倍くらいであったのと比べると、ゼロがどんどん増えていくロケットのようなことも起こっている。しかし超高値は長続きせずにある程度下がって下げ止まる。こんな出来事がきっかけでCDに編集されて発売されることも起こる。おそらく古本も似たような状況ではないかと思う。以前書いたがeBayでは30-50年前の日本の白黒写真集でかつては普通の本屋で売っていたものにかなり値がついていて、世界的に写真家の知名度が上がりつつあるのを感じるので、また日本でも写真集がでるのであろう。
超専門家とか目利きが価値を感じたとしても、それがマニアなり熱心なファンに理解されるには何年もかかる。しかし一旦再評価されるとネットの時代は値上がりが速い。だから結局何らか未評価だが価値のあるものを手に入れたとしても、換金して利益がでるようになるまでは20-30年間は溜め込みながら寝かせておくことが必要になる。寝かせないで右から左に商売をしたければ評価の定まったものを扱うことになり、薄利になるし、店の特徴を出せないで、どこでも同じようなものを売っているようになる。
コンテンツの再評価は前述のDJのように市場を活性化させる要素でもあるので、超専門家とか目利きがネット上で情報を発信できるようにする必要があるだろう。