投稿日: Dec 27, 2012 1:28:23 AM
押し売りはゴメンだと思う方へ
デジタル印刷が伸びるであろう夢が語られた時には、いつもパーソナライズというキーワードがあった。DMをパーソナライズしたらレズポンスが10倍になった事例というのが紹介されたりした。そういった仕組みを聞いて、ウチでもやったが効果が無かったというところが大半だった。顧客のプロファイルをデータベース化してターゲットを絞り込んで何らかのメッセージやグラフィクスを送りつけるというものだが、売る側が市場であると思うターゲットと、そのターゲットの欲しいものとのギャップが大きい。結局売る側は印刷パンフレットで使っているコピーの文言を何通りか派生させておいて、ターゲットごとに切り替えるというマスカスタマイズをしているだけであった。
今mail(主にspam)やWebでも同じようなことが行われるようになっている。何らかの登録が必要なサイトを開くと、私の年代では「ハゲが直る」「前立腺が…」「ED…」「熟女…」のようなバナーが出てくる。もし年齢を偽って登録しておくと「グラビアアイドル…」「包茎手術…」などが出てくるのかもしれない。こういったあまりにもストレートな広告は一時よりは減ってはきていて、こういった方法でターゲット広告が発展することはありえないことを示している。
デジタル印刷のDMでうまくいっている例はマスカスタマイズではなく、ほぼ営業活動に近い1:1のものである。アメリカでは誕生日にかこつけたプロモーションとか、過去のコンタクト(例えば旅行先)の記念写真にかこつけて、絶対に印象深い「刺さる」内容を送りつけるもので、実際に企画制作に営業担当者が関与していることが多い。つまり内容的には私信(レター)に近いキャンペーンであって、パーソナライズだから相手の氏名を紙面に入れればよいか、といった安直なものではない。
すでに役立つ内容を表示できるようになったECサイトのリコメンドも、まだ商品間の相関をベースにしているので、利用者の心に刺さるレベルには達していない。
Webやスマホのターゲット広告に至ってはECサイトまでもいっていないで、spamをソフトに表現している程度である。あるWeb広告の記事では、「これまでのバナー広告は、どんな広告面を買うか? ということが中心でした。しかし検索連動広告の登場によって、どんなキーワードを買うか? という時代になりました。そしてこれからのインターネット広告は、どんな視聴者を買うか? という時代になってきます。あなたもどこかの広告にターゲティングされて、驚くほどスムーズな“もてなし”を受ける――そんな日がすぐにやって来るでしょう。」という。そうなるためには、ぶしつけな「ハゲ」だの「包茎」だの売り方ではなく、またウザく思われる不適切なDMの経験を繰り返さない、ラブレターの気持ちでコピーを書けるような、何か別の要素が必要であろう。(参考 DMの原点は、「お手紙」)