投稿日: Mar 11, 2014 1:35:36 AM
ユビキタスコンピューティングという意味でネットの社会的な影響として、いろいろなパラダイムシフトが想定されたが、実際にはまだ実現したものはそう多くはない。日本政府のeJapanのように全然浸透していないもの方が多くあるのである。しかしいろんなところで改革・改善の努力をしていけば、必然的にユビキタスコンピューティングのような利用形態になっていくであろうという考えで、それに向けての活動をしようと「メディア事業開発会議」というのを法人登記した。
最初のうちはビジネスとして動いているプロモーション関連のことがテーマとして多かったのだが、そんな中で3.11東関東大震災は起こった。そこで半年以上いろいろ考えた末にプロモーションや広告関係のことは取り上げる気がしなくなった。さよならアドテックという気分だった。広告というものは災害復興という点でも役に立たないものであると感じた。
広告はコミュニケーションの一種のようではあるが、違いも明確にになっているように思った。当時民放はCM自粛になって子宮頸がんがドウとかJAROの公共広告がたくさん流れていた。一方NHKはもともと広告はないのだけれども、タレントや文化人が被災者を励ますようなショートメッセージを急きょ作っては流していた。どちらが状況にふさわしいかは明らかであった。つまり広告業界の無能ぶりが露わになっていると思った。
ネットの方は災害時のポータルサイトをGoogle、Yahooはじめ多くのところが手掛けて、YouTubeにもナマの情報が上がった。テレビの報道でも多くの映像が流れ、それらはキャプチャされてYouTubeに勝手に上げる人もいた。仙台の佐藤水産の専務が中国人研修生を先に避難させて自分は行方不明になった時の映像があった。中国人研修生が撮ったもので、津波が押し寄せてくるときに逃げられた人と逃げられそうにない人の両方が映っていた。それは民放で流れたモノであったが誰かがYouTubeに載せた。しかしテレビ局は削除させて見れないようにした。
違法な動画を削除させることはあるが、この場合はどうしたものであろうか?情報の価値を考えるならば、勝手にアップしたものは削除させてもよいが、テレビ局が代わってアップしなおせば、みなが見れるようになるのだが、そうはしなかった。元の映像は研修生がとったものでテレビ局のカメラマンのものではないので、どういう理由で削除したのかわからない。
現在はこの中国人研修生を救った件については、中国でアップされたものがいくつかある。それらは日本人に感謝するビデオである。中国に帰国した研修生自身のインタビューも多く中国サイトにはある。おそらく中国ではこのことが語り継がれていくのだろう。では日本ではどうなのか?
日本のテレビ局はやはりその日暮らしの性分が身についているのだろう。広告も同じである。CMが止まったならば、何か適当なもので埋め合わせをしたわけで、両者ともに社会に向き合っているとはいえない。どんな突発的なことが起こっても、その時の社会に必要な行動ができるようにはなっていなかったのである。
その点はネットの方が災害ポータルなどの動きも早かったし、自費で被災地にボランティアで行く人たちの様子もたくさん伝えられた。こういったことは直接ビジネスには結びつかないのだが、やはりどこかでされ続けなければならない。そこで、お金が回ることを第一に考える「メディア事業」ではなく、社会に対して必然性のある「メディア事業」に切り替えようと思ったのだった。