投稿日: May 29, 2010 2:45:44 PM
動物的本能で電子書籍はヤバいと感じる方へ
メディアの人たちをみているとIT業界のニュースを面白がる傾向にある。例えばどんな電子書籍ビジネスや読書端末があるとかはさんざん書いていても、どんな本が電子書籍で読まれているのかなどは書いていない。iPadでもPCとはどのように接し方が変わるのか、というのはあまりなくて、子供が「ボクも欲しい」といっているのと同列のニュースが続く。以前は個人HPや個人Blogとマスメディアは同じようになったなと思ったが、もっとマスメディアは軽くなって、twitter並みになりつつある。読者からみるとメディアは先鋒隊であって欲しいのではなかったか。
まあ突然リテラシーの話やライフスタイルの話をしても、読者の食いつきが悪いのは目に見えているので、そこまではメディアの人に要求しないが、せめてビジネスの可能性くらいはもっと取り上げるべきだ。アメリカのメディアでも日本のEBookの記事を書くにあたっては日本の出版ビジネスの特徴(返本自由とか再販制度の不可思議さ)とか、出版市場などを手短に書いていて、これって日本で電子書籍を待ち遠しいなあと言っている人もよく知らないのではないかと思ったこともある。今の問題点を知らないで未来は語れない。モノなりサービスの提供側と受容側の関係が「電子」云々だとどのように変化していくのか推測するところからビジネスの立案は始まる。例えば最近のニュースなら4者連合はそこをどう考えているのか、Bookersならどうなのか、などなどは取材していないのか?
意地悪な書き方をしているが、取材陣が踏み込めないのも書けないのも、日本の事業主体の側で答えられないからだろうと推測できる。そのように仮定すると、この先も思いやられる。電子書籍の安売り乱発時代が来る。そろそろ見られる傾向として、「電子書籍なので」という根拠で原稿料や制作費をケチったり、セコくみみっちくスタートしようという空気である。これは今の出版が新刊を乱発し続けなければならない自転車操業であるのを、全く肯定的に電子書籍に当てはめている。
中高生の制服が6月1日になると衣替えになるように、天体の運行に即して行動する農民の習性が、古文書の虫干しのごとく「俺たちのムラも電子書籍さヤルべぇ」と向かわせているのかもしれない。それで小銭が動いてもそのうち市町村合併でどこかに吸収されてしまうだろうし、それに抗って白虎隊や新撰組のようなことをしても滅んでしまうだろう。
電子書籍が旧来の出版ビジネスの仕組みを壊す力がありそうだというのは、出版とは何か、自分はそこで何をしたいのかという原点に帰って考え直す機会なのだから、これを契機に自分にとってあるべき出版を立ち上げるという気概をもてないと、今後の紆余曲折を乗り切れないで自滅するだろう。この空気を察して電子書籍には手を出さないという道もあるが、自滅しないにしてもビジネスとしては発展は望めない。
2010年06月25日(金)のKixプレセミナー2 #kix0625 で10年後のメディアビジネスを考える