投稿日: Oct 18, 2012 2:46:48 AM
オンラインがどのように作用しているかと思う方へ
10月17日の研究会 新しい出版マーケティングの時代 で、日本出版販売株式会社の鈴木悟志氏は『ほんらぶプロモーション』の紹介をされた。これは日販が運営するHonya Club.comというオンライン書店が行うキャンペーンで、「あなたにとってトクベツな本を3冊だけ選ぶとしたら? 3 SPECIAL BOOKS」という設定で、Honya Club.comの利用者が参加でき、そこにアップされた本を選んでいる人とのつながりが見えるSNS的な仕組みになっている。また出版・編集関係者や有名人や作家も、自分の人生中で「トクベツな3冊」について紹介している。どのように「トクベツ」かという理由を簡単に選べるようになっている。
このキャンペーンサイトで書籍の注文ができるが、書店受取をするなら送料無料とか図書カードが使えるなど、このキャンペンに参加している1700の書店とのコラボもしている。
このあと鎌田博樹氏がアメリカの出版マーケティングの現状を紹介されたが、その中でここ数年の出版流通環境の変化として、オンラインストア、Webでの発見、SNS、という3つの傾向を説明されていたのとかなり一致する動きである。オンラインでの書籍販売は電子書籍も含めるとアメリカでは売り上げの50%に、日本でも20%以上と近年大きく変化した。それと平行してお勧めやレビューを含めてWebで本を見つかり易くすることが発達してきている。また購入動機としてSNSが大きく効くようになったとうことだ。またコンテンツの評価・ランキングなどよりも、読者にとってはその本を今読むべきコンテキストが重要になるが、それがWeb中心に行われるようになる。
3 SPECIAL BOOKSのサイト(https://3specialbooks.com/)にログインすると、自分の挙げた3冊を起点に、それらの本を挙げた人々が表示されて、その人々の理由やプロフィールを見る、という連鎖がずっと続いていく。視覚的にはSPYSEEに似たところがある。こういう一種のお勧めはCDなどでも行われたことがあるが、9月30日をもって店仕舞いとなった丸善の松丸本舗、本屋大賞、など出版分野で主としてリアル書店でいろいろ行われてきたマーケティング・販促の試みを、Webで可視化しSNSに結び付けていくようなことが増えてくるのだろう。
こういったプロモーションが従来と何が違うのかというと、クリックの多少だけを見るのではなく、SNSにたどり着くようにしておけば解析が可能で、それに基づいた販促のPDCAが短期間に回せるようになることである。逆に言えば、市場の様子を分析して何らかの販促の手を打つ用意をしていなければ、データを解析することは無意味になることである。日販の鈴木氏が3年ほど前にアメリカの出版社でマーケティング・プロモーションに従事されていた時には、出版した書籍がどの地域で売れ出したかを見て、地方紙に広告の手配をするようなことをされていたという。
書店のデータを集めて出版社が行動を起こすというのがアメリカの出版マーケティングになっている。