投稿日: Feb 02, 2011 11:14:28 PM
やるべきことは無限にあると思う方へ
アメリカのベンチャービジネスに対する投資家は、ビジネスを評価・採点する人でもあるわけで、そのビジネスの価値や可能性を、時代や社会の諸条件に照らし合わせて冷静に判断している。日本でもシンクタンクは似たことをしてそうだが、大きな違いはアメリカの投資家がベンチャーの先輩である点で、後進の育成や交流や交代などにも大きな役割を果たしていて、それがアメリカのIT業界全体の成長に役立った。今日本のベンチャーもアメリカに進出し始めているが、ほっておくと孤立するかもしれないので、日本でも後ろ盾となるソサエティができることが望ましい。記事『20世紀の幻想 メディアの産業化』ではメディア産業の自立が怪しくなっていることと、既存メディアのインフラとなるような新たなビッグピクチャーを描く必要があることを書いた。その例として、記事『成功するデジタルメディアとは』では、技術的な必勝法をビジネスプランにうまく当てはめた設計であるKindleのアーキテクチャに触れた。こういったアーキテクチャやビッグピクチャは個々のビジネスモデルの背景にあるものなので、共有できる情報であると思う。ただそういった話に積極的に取り組む人はどの程度居るのかわからない。
記事『自分の未来図を描いてみる』ではメディアに関する事業ビジョンとか中長期の事業計画をはじめるにあたって、アーキテクチャを考えるということを書いたが、そこからビジネスモデルにつながるところを考えてみたい。この場合のアーキテクチャとは映画館とか劇場を作ってどうやったサービスを提供するかを考えるようなもので、ビジネスモデルの方はどうやって客をあつめてどのように金を取るか、というようにも例えられる。まず現在の閉塞感に満ちた既存ビジネスがどのような要素でどう成り立っているかという分析や、Kindleのようなモデルの分析との比較検討が必要だろう。単純に新技術を使ったら何とかなると考えるのではなく、提供できる新たな価値やポテンシャル、発展可能性、進展のテンポなども確信がもてるほどに理解しないとアーキテクチャにはならない。
そこから直接ビジネスモデルに進むこともできるが、今ビジネスとして成り立つことと、技術革新に沿って次第に変化する環境との間の折り合いをつけるために、一度大きな未来像を描いて見るのがいいだろう。つまり目下のビジネスだけでなく、その関連で起こることも含めて将来ブレイクしそうなBigPictureを作るのである。これはステークホルダやコンペティタも含めて共同でできることであるし、これをシェアすることで自分たちのスタンスも次第に明らかになるのではないか。そこでもう一度自分たちのドメインを想定して、今の出発点のコアコンピタンスから金のまわるビジネスモデルのスタートライン、何年か先へのステップを考えることになるだろう。
BigPictureの例は過去にもいろいろ参考になるものがある。例えばリクルートは人生の中で大決断をしなければならない局面に対して最大限の情報でマッチングをできるようにしていたし、ベネッセは人の生涯に沿って必要なナビゲーションをしようとした。Amazonも最初の何年かで本が軌道に乗ったころから、本という社会の索引をきっかけに検索・発見のあとの物販を幅広く行うようになった。現行のメディアビジネスは本や既存メディアという媒体の範囲で何とか金をまわそうと考えるが、その束縛から自分を解き放つことが第一であろう。