投稿日: May 19, 2011 9:59:23 PM
ネットベンベンチャーの脆弱さを乗り越えたい方へ
朝日新聞デジタルが単に紙のレプリカを毎時行うものであるので、面白みに欠けることを書いたが、HuffPost始めWebで新聞を始めたところは読者のコメントや意見のシェアに比重を置いているために、メディアの側はいかによい読者を抱えているかが課題になる。日本の新聞社は新聞販売を販売店に任せていて、実際の読者を知らない。例えば朝日新聞読者の何%は学校の先生です、みたいな統計はない。今後メディアと読者の関係は、例えば HuffPost+SocialMedia の組み合わせなら、実態が可視化できるようになるだろう。紙の新聞であっても世帯財であって、家族が情報共有して家庭内文化を作るのに役立ってきた。ニュースをネタに家庭内会話がされることに意味があったが、それはTVに役割が移った。そして朝日新聞デジタルのように、個々人のパーソナルデバイスにニュースが閉じ込められるなら、ネットで家族や知人がニュースをシェアする仕組みを作らないと、紙の新聞にも劣るものになるのではないか?
スマホなどのパーソナルデバイスは「随時・常時」触れるものなので、TVのようなスケジュールに沿って番組配信がされるものとはニュースの作り方も異なる。新聞のラテ欄に代わるようなものを作ることがいろいろ試みられているが、まだ確立していないので、「随時・常時」のメディアだけではフラグメント化し過ぎていてニュースの見逃しが避けられない。今はデジタル録画のようなアナログとデジタルが補完的な関係にあるが、情報提供側がデジタルに振り切れてしまうと事態は変わる。アナログの売り上げが採算の限界を割ってしまうと、紙での発刊のコストに耐えられなくなって、廃業するか一気にネットに行くかの選択を迫られるようになるだろう。アメリカの地方新聞はそんなところまできている。結局オールデジタルに転身できる新聞社は限られて、GrouponとかCraigslistなど新興メディアがそれぞれ新聞の役割の一部づつを担うように変わっている。
日刊新聞が総合情報を扱うのに対して、ネットのメディアは http://jp.techcrunch.com/ を見ても前述の断片的な情報サービスが多く、これらを駆使する消費者というのはネットリテラシーの高い人でないと難しい。だからネットメディアが総合紙誌を打ち負かすにはポータル化が必要で、そこを狙ってFacebook、GoogleTV、AppleTV、Appleの何々Storeなどが次策を練っているのだろう。しかし一般大衆を狙ってトップダウンの一発ソリューションを提供しようという試みはソーシャル時代にそぐわない。むしろ昔のミニコミが商業雑誌に成長していったときのような、草の根メディアがネットでブレイクするという可能性もある。
例えばTVでは食の番組が多いが、これを突き詰めると食材とか生産者の情報になり、農業番組というのも面白いものが作られるようになった。しかしTVで農業や食のチャンネルを作るほどでもない。あってもよいと思うが、TVのビジネスはそういうやり方ができにくいようになっている。むしろ農文協のような特定テーマの出版社が生産者から農業学校・試験所~家庭菜園をする生活者までカバーして日本の食のポータルのような役割をするようになった。この先にはいろいろな可能性があり、産直ビジネスとの関係とか、あるいは食文化とか教育との関係とか、農文協と連携したいプロジェクトが出てくるかもしれない。また巷にはレシピに関連して食品業界と結びついたCookpadのようなものがあり、こういった情報サービスがうまく連携するようになると、マスメディアが口を挟めないほど内容の深さもカバー範囲の広さもあるものになるだろう。
まとめるとソーシャル時代には、個々のメディアは狭くても、よい読者を抱えているところが可視化される。それらが連合すると総合誌に勝るものになる、というプロセスで新しいデジタルメディアの社会的な存在意義が高まっていくように思える。