投稿日: Nov 03, 2011 2:30:48 AM
スマホで情報発信はカンブリア紀を迎えると思う方へ
昔学生時代にミニコミ誌を作って大阪駅前の一流の本屋に置いてくれるようにお願いに行った時に、雑誌の作りはこうなっていなければならない、という講釈を受けた。つまり自分達の作ったものは無手勝流であった上に、お手本としていたのが欧米の同種の雑誌であったために、日本で流通している雑誌とはひどくスタイルが違っていたのであった。こういう雑誌は平積みできないので、背に必要な要件が入っていなければならない云々いろいろいわれた。そのアドバイスに従った面もあったが、それよりも他の販路も考えようということになった。つまり本や雑誌の流通業者のために発刊しているのではないという意識だったからである。
今の日本で本屋に流通している雑誌の設計・デザインは、意識していないにしても結局は流通の都合が潜在的に組み込まれている。本や雑誌、あるいはCDも以前に比べてロットが1/2~1/4になって、みんな売れなくなったと頭を抱えている。しかし日本にも電子書籍の時代がやってきて問題が解決するとは思えない。おそらく電子書籍の興隆は既存の流通をぶち壊すだけで役割は終わりだ。新しいメディア利用のスタイルを作るのはコンテンツを処理している個々の企画・制作側の問題で、Amazon でも Apple でもないはずだ。今パッケージ媒体が売れないのを乗り越えるには、売れるパッケージ媒体を根本から再発明するしかないはずだ。オビも背・束も値ごろ感も部数も印税も広告も、何もかも従来の慣習を捨てて考え直さないで、過去のオイシイところは残して置きたいとステークホルダのそれぞれが考えるから、日本の電子書籍は中途半端なメディアになってしまったのではないか。
その点ではInDesignで紙の雑誌を作って、それをeMagに展開するのが一番簡便であるとしても、新たなビジネスに踏み出すにはあまり有効ではないというか、殆ど過去の亡霊に縛られたやり方に思える。しかも単純な流用ではないので制作の手間はそれなりにかかる。もうひとつは紙のコンテンツの流用で、雑誌の連載や、単行本の一部分など短かくまとめて、買いやすい値段にするフラグメント化である。これは紙の本が読むのに何日もかかるのに対して、Web記事は2-3分の単位で読むというギャップの大きさの間を埋める媒体の開発である。これらはまだスタイルが出来上がっていないので、内容・値づけ・印税など自分達で試行錯誤しなければならないが、そういった工夫の余地があるからこそ新ビジネスとしての可能性も芽生えるのだ。
他人がお膳立てしてくれたビジネスモデルなど新ビジネスでも何でもない。今までの出版のブランドを背負っていても電子書籍は大して売れないことは実証されたわけだから、日本のeBookなるものの次の段階は新人が活躍することになろう。スマホ対象の情報発信は敷居が低いし、音も映像も扱えるようになったのだから、電子書籍とかeBookと呼ぶかどうかは別にして、何でもメディアにしてみようという試みが起こるだろう。