投稿日: Nov 23, 2011 1:9:26 AM
コンテンツ流通を見直すべきと思う方へ
EBook2.0 Forumで、「EPUB3に縦組を含む日本語組版仕様拡張を盛り込むことに成功した人々の苦闘の跡を記録し、様々なコンテクストの中で、その意味を理解する材料を提供」するために、「EPUB戦記」という連載が始まっている。 ちょうど1年前の記事『連綿と続く縦組みの糸』において、EPUB3J要求の背景に触れているが、単に日本の紙の出版物を画面で見ることが目的ではなく、日本語の縦書き表現が必要なところ全体を考えるべきであると思う。本を制作するには文字データを組版してプリント・製本するという工程を辿るが、それをEPUBはあまり意識する必要は無い。現にテキストをEPUB化すれば読み上げができるとか、紙の本とは異なる展開が始まっている。
つまり紙の本の製作に比べて、EPUBにはあれが足りないこれが足りないという人がEPUBの利用者とか応用開発者ではなく、EPUBでマークアップとパッケージ化されたテキストデータから新たな表現を作り出すことが、新たな需要を作り出すことになると思う。しかしそれはソーシャルリーディングとかITの仕掛けがもたらすものではなく、クリエータとか編集者・デザイナーが直接自分のPCで作品を作れることで、いままでは流通していなかったコンテンツが流通し始める可能性を感じる。
例えば、俳句・短歌・詩と、写真や絵を組み合わせることは、紙の上では昔からあったが、それがPC上で簡単にできて、スマホやタブレット向けに配信して、どこでも見てもらえるようなものは、学校教育の場から、観光案内から、イベント・冠婚葬祭まで、おそらくショートビデオと並ぶくらい一般的な応用になるだろう。EPUBという標準ができることで、例えばパワーポイントやスライドショーのアプリなどでもEPUB書き出しができ、どこでも見れるようになるかもしれない。EPUBは誰かの商売のためにあるのではなく、絵手紙のように生活に潤いをもたらすコミュニケーションとか豊かな心にするためにあると考える方が先で、そのような効用があるから、ビジネスにも使えるということだろう。
紙の時代からいろんな案内にテキストコンテンツの引用が使われているのだが、デジタルとネットの環境上で行われる場合は、引用先から引用元にリンクを貼ることができ、引用元を紹介するとか商業コンテンツの露出や販売機会が増えることになる。コンテンツの売れ方は沸騰型というか急にブレイクする流行モノと、細く長く売れる文化財型のものがある。音楽というのは店頭販売が基本ではなく、どこかで偶然に耳にはさんだメロディに興味をもち、そのうち購買に結びつく長いサイクルがあるが、ダウンロード販売で興味から購買に至るタームが短くなった。文字コンテンツにも店頭販売ではなく、そういう売れ方ができる時代が拓けてきたのではないか。