投稿日: Feb 07, 2011 11:2:52 PM
ゼネラリストが足りないと思う方へ
今日のAppleの成功に至るまでには大きな転機があったと思う。その最大のものはiPodの登場であるし、その基にはSteveJobsがソニーのような情報家電を指向していたことがあるだろう。携帯デジタル音楽プレーヤは韓国のmpmanが先行していてWindowsで使うものであった。Appleはそれよりも音質がよく、操作性がよいものをMacにつなげて使うものとして登場させたのがiPodで、さらに楽曲のダウンロード販売を本格的に始めた。そしてWindowsのiTuneを出した頃からiPodは桁違いの普及をするようになった。これによってパソコンユーザ全体にAppleがコンタクトを持てたことが、後のiPhoneの普及につながっているだろう。Windows利用者からもAppleとの対立意識はなくなっていった。
これで従来のMac対Windowsという図式は解消されたのと同時に、AppleはどうみてもパソコンとしてのMacには身が入らなくなったのではないかと思う。それは2007年から登場するiPhoneやiPodTouchに先行して、iPadのようなタブレットが構想されていたことを2010年にSteveJobsが話していたことからも想像できる。つまりAppleの第2の創業といってもいいほどの経営の変化があって、この後に電話やTVなど、またデータセンタというように、過去のMacとは関係ない投資に向かう。それは単なる製品開発を広げたというよりも、パソコンの時代の次の時代のビッグピクチャを描いて、事業ドメインを考え直したことだと考えられる。
かつてのSteveJobs像は商品のデザイン面の優れたところや商品細部のこだわりの凄さが話題の中心で、商品そのものはcubeとかiMacとかキワものもあったが、今は家電業や通信業とわたりあえるくらいに戦略に関してゼネラリストになったように思える。つまりベンチャー経営の段階を脱した契機がiPodであり、情報家電指向というところからゼネラルなものの考えをするようになったのだろう。もしこうならなかったらパソコンメーカーとしてのAppleは風前の灯になっていたはずだ。そしてそれと同様なことが日本のITメーカーにも降りかかろうとしている。
日本には昔からAppleのファンは欧米よりも高い密度で居る。日本人のApple商品への賞賛は、自分もそのようなものを作りたいという日本人の職人好きにも基づいていて、それがガラケーという職人的な製品設計にもつながっていると思える。家電もIT製品も韓国中国などの製造能力の高まりに対抗するために差別化を考えるのだろうが、職人的な工夫をいくら積み重ねても細分化して割高でしかも利益性の低いものしか作れないだろう。日本人はゼネラリストの抽象的な議論を嫌う傾向がある。もっと楽しいワクワクすることを話題にしたいのだ。だからガジェットの優劣評価やお買い物のような記事はウケる。しかしガジェットであっても、それでビジネスをするならば、なぜそのようなものが設計されたのか、なぜ受け入れられるのか、という背景を理解をする必要がある。
消費者としての視点だけではビジネスはできない。日本にもっとゼネラリストが育つようになってほしい。職人はほっておいても育つだろうから。