投稿日: Jan 05, 2015 11:57:35 PM
前職ではメディアやグラフィックス関係のITベンチャーの調査をしながら、その事例発表のようなセミナーもしていた。その30年間を振り返ると、生き残っている会社はそれなりにあるが、大きく成長した会社はほんの少ししかない。つまり技術革新が起こって新たなビジネス領域ができても、中小零細企業が増えただけで、日本の経済を背負うようなITベンチャーは指折り数えるくらいしか生まれなかった。30-40歳で起業しても20年もやっていると、そこらの中小企業と同じ様に見えてしまうのである。ITで日本が強くなるという要素はなかったせいか、再びモノ作りが叫ばれだして、世界の部品メーカーとして強みを発揮させようという意見もある。
しかし作る能力があっても、ビジネスを伸ばす能力は別であろう。ITベンチャーが中小零細企業になっても喰っていけているのならいいじゃないかという考えもあろうが、産業政策としては実力のある中小零細をM&Aして、さらにスケールの大きな事業体に育成した方がよいはずである。それには企業の運営管理能力が必要になるのだが、そこが日本は弱かったのではないかと思う。
アメリカのようにITベンチャーは他社よりもワンポイント抜け出る何かを持っていると、もっと規模の大きい誰かが企業買収してくれて、一旦「上がり」になるというようには、日本はなっておらず、ある時にはワンポイント抜け出していた会社も、技術が陳腐化する前にブレイクできず、平凡な中小零細になってしまいがちである。
つまり技術にはそれぞれ旬の時期があり、そこでなければベンチャーらしいブレイクは不可能で、一生中小零細を背負っていても旬を過ぎた技術にチャンスは巡ってこないのである。だから旬のうちに会社を売り抜けて、それまで育てた技術をビジネスをブレイクできる人に委ねることで、社会的には中小零細がするよりもひとまわり大きな勝負ができることになる。その時に日本が世界を相手に勝負できるようなものでないと、ITのようなグローバル化時代には日本が強いことにはならないだろう。
日本は中小企業の数が多くレベルが高いのが特徴の国であったので、大企業はそういった中小企業をパートナーにしながら世界的なビジネスを伸ばしてきた時代があった。しかし大企業は海外生産を増やし、国内の中小企業との結びつきは弱まりつつあるのかもしれない。中小企業も世界の部品メーカーになればよいようなものだが、それでは国全体としては大企業の輸出低下分を補うことはできないであろう。
以前クールジャパンの話を聞いた時に、世界に日本ファンを増やすとか、日本のブランド力を高める、という狙いがあるように感じたが、そこには世界を相手に仕事をする人材という課題はあるようにみえなかった。その欠けている部分をクールジャパンの機構がお手伝いしますよ、という話だったが、それが本当に頼りに出来るものであるような気はしなかった。
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