投稿日: Dec 06, 2013 1:48:22 AM
複合的な利用を前提に
電子書籍には個人的な興味はあるものの、電子書籍が社会に何らかの影響を与えるかどうかについては、今すぐは見通しがつかないように思えたので、2012年に行っていたMediverseとE-Book2.0 Forum共催の電子出版再構築研究会は2013年は中断している。とはいっても時々はこのblogでもコメントしているように、観察や考察は続いていて、特に学校関係でどのように使われようとしているのかについては、当事者の動きに迫ることはやってきた。
見た人は誰も「このようなものは不要」とは言わないものの、自分からやってみようとする人が本の僅かしか居ないことは、紙の本の自主出版と大差ない状態である。つまり人々のメモ・ノートや原稿が電子化された時代とはいっても、情報の整理・統合という編集作業の敷居は少しも低くなっていないといえる。
うちの子供や奥さんの周辺がどうなっているかを聞いても、電子書籍が話題になることはまだないようで、おそらくテレビのニュースなどでたまに出てくる程度の電子書籍の応用では、コンテンツ市場の激震というようなものにはなりそうもない。たまたま出版業界や書店が低迷しているので、電子書籍が悪影響をしているかのようなコジツケがみられることもある。いずれにせよ電子書籍が新しいニーズとか市場を興すとか、ライフスタイルを創り出すといったポジティブなトーンは陰をひそめてしまった感がある。
しかしこれらの状況は電子書籍を従来の出版の延長上に考えた場合に必然として行き詰まりになることだと思う。紙の出版そのものが行き詰まっているのだから、それを踏襲したビジネスの程度は知れたものである。それに対して新市場を狙う人たちは、ゲームのモデルや、通信の課金のモデルの先にコンテンツビジネスを考えるものであった。これは紙の本のような「ストック」の要素を持ち合わせず、利用料金的なモデルにしていて、ある程度離陸したし、今後も伸びるものであろう。
でもこの利用料金的モデルで従来の出版すべてを括ることもできないので、違うモデルもいろいろ出てこなければならないが、そこに踏み出すところが少ない。つまり2012/11/27に話し合った ボーンデジタルな出版に向けて のような分野なのだが、これらは一括で電子出版として話すことは難しい。JEPAがずっと採り上げてきたことであろうが、そこから状況が電子出版に向けて開けるようにはならなかった。
しかし例えば学校とか利用者の立場で考えると、一見別々のモデルであるものが重なってくるのである。ところがビジネスをする側が「デバイスはこれ、通信はこれ、オーサリングはこれ…」という条件のもとでサービス提供をしていると、利用者側にとっては不便で煩雑なことが増える。インターネットの利用はWebブラウザで何でも見られることで急速に広がった。電子書籍においてもEPUBやHTML5でそのような統一的な世界ができると技術面では期待されている。電子書籍を利用者視点で考えるならば、複合利用のテーマは避けて通れない。ただまだコンテンツやサービス提供側が、Webの爆発のような電子書籍の拡大をイメージできていないのではないか。