投稿日: Apr 19, 2016 11:53:6 PM
デジタル印刷とかプロダクションプリンティングに合わせて、バリアブル印刷の新しいビジネスモデルをつくりあげるという努力はPDFが生まれた1990年くらいからあったと思うが、多くの人が導入できるようなモデルはできなかった。これにはバリアブル印刷のパラドックスのようなものがあるからだ。
結論からすると、フレキシブルな生産方式になるバリアブル印刷は、そのビジネスが安定しないものになるということだ。
それまでの版を作成しなければならない印刷方式では、かつての総合雑誌がオフセットとグラビアと凸版のハイブリッドで出来上がっていたように、印刷方式がビジネスモデルを左右することはなかったが、バリアブル印刷となるとその印刷物を使うところのビジネスのプロセスと密接にかかわって、バリアブルの機能次第でビジネスのやり方も変わるようになる。同時にビジネスのやり方を変えるとバリアブル印刷のやり方も連動して変える必要が生じる。
だからバリアブル印刷のソリューションは寿命が短いかもしれない。いやそういう覚悟で取り組むべきだろう。つまり顧客と共に常に改善を繰り返していくような関係を作らなければならず、他社のサクセスストーリーから学べるところはそれほどないということになろう。つまり3年契約のビジネスモデルというようにはならないかもしれない。事実、大手通信教育では1年契約しかしてくれなくて、印刷側はそれでも大型のデジタル印刷を設備せざるを得ないとうようなことがあった。
こうなると先に設備投資をしておいて、あとから仕事をかき集めるような従来の印刷のビジネスの仕方は通用しない。むしろプリント業務はアウトソーシングするくらいのソリューション部分を中心にした事業体である必要がある。プリント部分はデリバリ業者が設置するのが最適であろう。つまるところデジタル印刷は印刷業務のようで印刷ではないのだ。デジタル印刷の成長鈍化というのはソリューションの未発達ということでしかないと思う。
この先はバリアブル印刷を捨てて、単に無版印刷としてのデジタル高速印刷という道も出てくるが、それにどれだけの付加価値が生まれるかは疑問である。
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