投稿日: Jul 21, 2010 12:5:23 AM
ベンチャー育成の風土が心配な方へ
トレンドとしては伸び続けるソーシャルメディアに商機ありという判断は間違いないだろうが、そこに既存の広告モデルや既存のアプリを持って行けばおこぼれに預かれるのではないだろうか、と考えるのはベンチャースピリットに欠ける気がする。ベンチャーの定義はいろいろあるのかもしれないが記事『ベンチャーの両輪 あるいは役割』では、私的には「時代を創る」ような考えがある人が魅力的に思えることを書いた。そうでないと金勘定だけしている企業と何の区別もできなくなって、魅力的で優秀な人材の集団ではなくなる。
元ベンチャーキャピタリストのPeter SimsがTechCrunchにGoogleの内情や評価を書いている記事があるが、その中でJP Morganがシリコンバレーとデジタルメディアの最新状況について語る「思想的指導者のディナー」というのをやっていて、そこには著名な企業のベンチャーキャピタリストや大成功を収めた起業家やJP Morganの人たちが集まったという。そこで「みなさん一人ひとりにお聞きしたい。どの会社が長期買いで、どこが短期だと思うか」という質問をしたら、Googleの先行きが思ったほどは評価されておらず、Microsoftのようになってしまうのではないかという危惧も合ったようなことが書かれている。
以前からベンチャーの先輩やビジョナリー話が出てくるところがアメリカの強さに関係していると思うのだが、現在事業に携わっている人は毎月の売上げや開発課題が目の前にあって、長期的なことを考える余裕はなくなりがちだ。そこにソーシャルゲームのようなトレンドがあると、今まで単独では売れない没アプリも殆ど無料のソーシャルアプリなら敗者復活の機会かと思って再度採り上げることになるかもしれない。日本でもベンチャー経営者のいろんな交流会があり、そこには経営ビジョンを描かねばならないという潜在的なニーズがあると思える。しかし具体的に一歩踏み込んだ話し合いをする機会は日本では弱い。特に新しいITベンチャーのことをよく理解するコンサルタントは少ないだろう。
本当は「思想的指導者のディナー」のように、会社の基盤、収益源、人材、カルチャー、成長率などを客観的な目で見てもらえる機会が必要だし、この世界のジャーナリズムもこういった意見を交換する場になるとよい。前述の記事では、「Google WaveやGoogle Radioで同社が失敗した時、批評家たちは、この会社が本当に人間を理解しているのかと疑問を呈した。」というくだりがあり、経営資源・経営者の総合判断・批評をする慣例が、堅牢な企業を産み出すことにつながっているように思える。