投稿日: Jan 07, 2016 12:17:47 AM
今頃になってアナログレコードプレーヤーの新製品が出るようになって驚いた。基本的に何かが進歩したわけではないが、USBでパソコンにつないで、ハイレゾでデジタル化して保存できるようになっている。分かったような、分からないようなコンセプトだ。アナログレコードをハイレゾで録音することに意味があるのだろうか? レコードは1度かけたら、あとはデジタルで聴けということなのか? 1度かけたレコードは部屋のインテリアにでもせよというのだろうか? これらの矛盾に満ちた疑問行動はすでに15年ほど前から我が家の日常になっている風景である。
つまり私がやっていることを世の人々がこれから行うとは考えにくい。それはアナログレコードの再生にはまた別の壁があるからである。レコード盤の溝は手入れしなければならない。針もメンテナンスが必要になる。これら面倒なことがつきまとう。それでもレコード盤をかけ続けているのは、CDやネット配信にはならなかった音楽コンテンツがいっぱいあるからである。
私が聴いているのは1960年代までの音楽の版権管理がゆるやかな時代の音楽なので、大抵の音源はどこにも管理されておらず、アナログであれデジタルであれ海賊版以外に流通させることは困難だからだ。私はミュージシャンの自主制作に近いような黒人大衆音楽のアーカイブを作っているので、レコードにどんな手間がかかってもやり続けているが、新録音ならばレコードを作って流通させる意味がどこにあるのかわからない。
古いレコードのリマスタリングをしていて気付くのは、レコードとは言っても、材質がシェラックなど78rpmと、45rpm,33rpmのビニールでは全然ノイズの質が異なることで、78rpmはおおむねすり減って音質が悪くなるのに対して、ビニールは傷(あるいは硬質のホコリ)が無数について音楽にノイズが重なっていくのである。だからレコードをデジタル化する際の音質向上策は大きく異なる。ビニールも材質がいろいろあってLPが主体になった以降のビニールは大変柔らかく、傷がつきやすい。プレスの際のホコリも傷の原因になる。これらのノイズをとるソフトもいろいろある。
もし過去のレコードの音質向上をデジタルでするための機器なら、そういうことに手を出す人は過去のオーディオマニアに比べても2~3桁くらい少ない数しかいないだろう。またLPの新録音が増えることを期待してレコードプレーヤーを作っているのなら、過去のビニールのような材質ではなく、ホコリがつかない材質の開発をしなければならない。またカッティングやプレスの方法もノイズが加わらないような新技術を投入しないと、ハイレゾに値するようなレコードは生まれないだろう。そこまで考えているのだろうか?
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