投稿日: Aug 06, 2015 12:0:0 AM
前職の最後の方で色のプロジェクトをやろうとしていて、デジタルカメラのRGB出力を、短波長1,短波長2,中波長1,中波長2,長波長1,長波長2,の6色分解フィルタにすることで、可視域全体の色再現を可能にする実験などをしていた。インクジェットプリンタもオフセット印刷も、プリントの方は色材を多くすれば色再現域は広がり、実際に5~7色で写真のような表現をすることはできるのだが、カラー画像を最初に取り込むところがカラーフィルムでもデジタルカメラでも3色のフィルタでは、ピンポイントで色を捉えられないところがあちこちにできてしまうからだ。
それはモニタも高色域であっても元からキャプチャ出来ていない色はちゃんとでないわけで、CGではいろんな色が作り出せるものの、自然画では我々の環境で日常で再現できない色は見たことが無いのである。たとえばオーロラはどんなだったかというのを、写真で撮ろうがテレビカメラで撮ろうが、実際に見た人の印象とは異なった再現しかできない。こういうことは自然界にあちらこちらにあり、身近なところでは皮膚の色、花や蝶、野菜の品種など、人が目で見分けてはいるものの、デジタルカメラ画像になると見分けがつかなくなる場合がある。
そのために特殊な光学機器がつくられていて、歯医者さんが歯を診断するとか、野菜の熟す程度を見分けるとか、産業分野にはいろいろある。しかしいちいちそのようなものを開発していくわけにはいかないだろうから、そういった仕組みをいっそデジタルカメラの中に入れてしまえばよいと考えたのである。
某メーカーにも一緒にやらないかと話にいったことがあったが、ちょうどR&Dのリストラが始まる時期であって実現しなかった。
この話は印刷関係の人にはものすごく理解し辛かったようである。印刷は昔から「原稿どうり」という仕事のやり方をしていたので、カラーフィルムには映らなかった色ということ自体が理解されないのである。例えばトマトの生育を毎日観察して写真をとっても、写真からは生育過程がわからない。つまり目で見れば色づき加減が毎日変わるのだが、その変化が写真ではわからない、という状況を想像できるかどうかである。
3原色では真を写すことはできず、従って事象を画像記録することは、今もって不完全なままなのである。どうしてこのことが世の中に理解されないのか、私には不思議でならない。
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