投稿日: Apr 10, 2012 12:29:21 AM
小銭でどうやってビジネスにするのかと思う方へ
20世紀初頭にレコードが開発されたもののプレーヤーがまだ普及していなかった時に、コインオペレートのプレーヤーが人の集まるところに設置された。これはジュークボックスの元祖である。技術的に言えばジュークボックスはオルゴールの延長上にあって、オルゴールも円盤交換方式でいろんな曲が選べるものがあった。しかし演奏だけのオルゴールがいくらきれいな音を奏でても、肉声やオーケストラも録音できるレコードには勝てなかった。文字や言葉を重んじる書籍というのも、オルゴールのようなニッチな分野なのかもしれないという気もする。シェークスピアの台本を読んで喜ぶ人よりも、演劇を見て喜ぶ人の方が自然な気がする。
ところでジュークボックスというのはアメリカではネットワーク型のメディアになっていて、放送禁止になった曲もジュークボックス網でヒットして100万枚売れてしまうようなことを以前に書いたことがあるが、ラジオがタダなのに対して有料でも聞きたいということは今日まで続いている。ここらあたりに、どうしたら人がお金を払うか、を考えるヒントがあるように思う。ではジュークボックスで1曲聞くのにいくらかかったか?
写真は往年のジュークボックスのコイン入口の表示をオークションで買ったものだが、だいたい1曲10セント、5曲で25セントのようで、つまり5円~10円である。このタグはお店で付け替えられるもので、店によって値段が違うことがわかる。おそらく1曲何十回かかかると元がとれるのであろう。中に入れるレコードは店の個性が出せる点がジュークボックスのよいところで、ラジオの垂れ流しよりも好まれたはずだ。自分のカラーに合わせてカスタマイズできるという特徴である。
ちなみに昔のレコードプレーヤに16回転という速度があったのにそんなレコードは見たことがなかったのだが、ジュークボックスメーカーがBGM用に作っているのに16回転があることがわかった。つまり誰もジュークボックスにコインを入れていないときに音が出ていないと困るからであろう。これは1000曲セットというようなものであった。それ以外にジュークボックスについてくるタダのレコードもあったようだし、ジュークボックスというのはゲームマシンと同じような業者がリースしているので、その業者が添付してくれるタダのレコードもあったようだ。店のBGMの設備として簡便に導入できるという特徴である。
またジュークボックスの曲はノリのよい気分がよくなるものが多く、当然ながら設置されているのがクラブなどなのでダンス曲が多い。ヒット曲でもない限り深刻な曲は少なく、演奏を背景にコメディ・冗談というのもあり、それがヒットする場合もある。つまりジュークボックスがどこにあるのかによってコンテンツはさまざまで、コンテンツというのは利用者のTPOの側から選択されるということである。利用者がコンテンツを選ぶというソーシャルな特徴もあった。
もうひとつ重要な点は、ジュークボックスが新曲を紹介する場でもあって、レコードのプロモーションの役割も担っている。この小銭しか動かないジュークボックスの意味は多義で、それが今日まで続いている理由でもあろう。