投稿日: Aug 09, 2011 11:32:1 PM
すでにピラミッド構造は無くなったと思う方へ
出版印刷というアナログな産業が斜陽といわれて久しい。全盛期には将来斜陽になるゾと予告されていたにも関わらず、そこから抜け出そうとした会社は1%くらいで、99%は時の流れに身を任せて、当然のように斜陽になったといえる。これは幸いというか経済のグローバル化の影響を受けにくく、早い段階でリストラをしないで済んだので、21世紀に入ってもオールド世代がたくさん居残るという不幸な状態になったからだ。ここに新たなメディア技術やビジネスモデルを持ち込むことは非常に難しくなっている。
しかしPAGEのような展示会を行っていてもっとびっくりしたのは、いわゆるIT業界の崩壊度合いの凄さである。組版や製版専用のシステムは無くなってしまったわけだが、それらが使っていたUNIXのワークステーションも無くなっているし、また専用システムのライバルでもあったパソコンソフトも、寡占化した一部以外は無くなっている。どの産業でも業界大手トップいくつという指折り数える会社がリーダーで、すそ広がりに多くの会社があり、確かにホストコンピュータの時代はITでもそんな構図は描けたと思う。しかし今ITをリードするトップ何社というのは存在するのだろうか?
IT業界はアナログな業界と違って新たなメディア技術やビジネスモデルを持ち込むことに抵抗はないはずで、ヤッパのように新興でも大きな仕事をするようになったところは存在する。しかしそういったボトムアップの力がIT業界に普遍的に存在するとは思えないほど、日本のWebメディアでも電子書籍でも沈滞ムードが感じられる。元気なのはゲーム機から市場を奪いつつあるネットゲームかもしれないが、これも総量が増えるというよりも「シフト」のように思える。日本のITにピラミッド的な構造が無いことのデメリットは、シンクタンク的なところの不在である。ITに志す若者がそれなりに居るとは思えるが、その人たちには一般ニュースしか情報は与えられず、烏合の衆化(フジテレビにデモに行っている暇があったら、日本の将来のことでも考えろ、とオジサンは思う)しやすいのである。
当然民間のシンクタンクもITやメディアに関する調査をしてはいるが、そこに専門家が居るわけではなく、いろんな企業や先生にヒヤリングして切り貼り報告書を作っているだけだ。こういうヒヤリングに付き合ったことはあるが、そもそもベースとなる仮説がショボく、アメリカのITニュースの域を超えない。つまり日本もアメリカのようになるだろうか? それはいつ頃だろうか? という問題の立て方をする前に、本当に日本の不足しているものは何かを考えなければならない。要するに地に足が着いたITビジネスを目指すところが少ないのが日本の弱点で、技術の風向きが変化したら吹っ飛んでしまったのが、日本のパッケージソフト壊滅減少だろう。
結局クラウド型のサービスになるとしても、そこで必要なアプリケーションは、かつてパッケージで切磋琢磨していたのと同じようなことをもう一度やらなければならなくなっている。まだパッケージの開発者が残っている今のうちに、サービス型ビジネスに転換するべきだろう。
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