投稿日: Feb 06, 2014 1:1:24 AM
評価と地位は連動する
日本のITエンジニアの地位が低いとか評価が低いという記事が多い。アメリカでももともとエンジニアの社会的は高くはないと思う。ただしシリコンバレーのような世界では、ITエンジニアが新ビジネスの核になっていったので、世界的に優秀な人が集まってきてしのぎを削るようになった。だから日本のフツーのエンジニアがシリコンバレーに行っても歯が立たないと思う。スタンフォード大学のキャンパスはゆったりのんびりしているようにも見えるが、書店に行くと新しいコンピュータサイエンスの本がびっしり揃えられているし、サンフランシスコの大きめの本屋はそれに付け加えてコンテンツやデザインに関する本も多くあり、デジタルメディアのベンチャーの背景には厚い文化を感じさせられた。
コードを書いていたプログラマがベンチャー企業の社長になるような図式的な理解は間違っていて、コードを書く以外のことをどれだけやっているかが見えていない。それは数学やアルゴリズムやシナリオ作りなど「構想力」を必要とする部分である。だからコードの記法を知っていることだけでなく、方法論とかIT戦略というメタな思考の素養が必要になる。彼らが「オブジェクト・オリエンテッド」とか「レイトバインド」にこだわるのは、共通の思考があるからで、こういう要素が日本では薄いように思える。
つまり日本のソフト開発は受託業務から起こったようなもので、客の言うとうりのものを作れば金を払ってもらえるということを長らくしてきた。しかしそれはソリューションとはほど遠いものであった。昔、オフコン時代というのがあって、中小企業も導入したが使いきれなかったというか、役に立たないものに随分とお金を使ってしまったように思える。それは紙の伝票や帳簿をデータ化しただけで、業務の改善を目指したものではなかったからである。
前職では、若いころにオフコンをやめて、その処理の3分の1くらいをパソコン化しただけで用は足りてしまって、むしろパソコンにした方がデータを多面的に使えて、業務の第一線のところでは専門家によるソフトよりも、MSOfficeのアクセスあたりを使った方が便利になったことがあった。
だから成果の出ないオフコンのような受託のソフトばかりをいくら開発しても尊敬されたり評価されるような仕事にはならないので、キャリアにもならなければ、起業にも結び付かないのである。オフコンの後の時代も根本的には変わっていない。欧米のコンピュータサイエンスを勉強したエンジニアなら、方法論的にこうしなければならないと語る部分を、日本のSIerでは「最新のソリューションはこうだ」とか「今のトレンドは」というアメリカの受け売りで営業しているので、本気でコンピュータサイエンスを勉強した人が活躍する場が日本には少ないのではないだろうか。
ITエンジニアの地位の件は、日本のエンジニアの問題ではなく、日本のソフトウェア産業の底の浅さを表しているように思える。