投稿日: Aug 01, 2013 12:47:57 AM
今更TUTAYAなど無しに出版はあり得ない
商店街から米屋・卵屋・乾物屋・レコード屋という特定の仕入れだけで成り立っていた店が壊滅したように出版物だけを扱う店がなくなるのも時間の問題と、記事『情報商材のコンビニ化』に書いた。小田光雄氏の出版状況クロニクル63(2013年7月1日~7月31日)によると、「TSUTAYA BOOKS」701店の雑誌書籍売上は1109億円となって第2位の紀伊國屋書店を上回わったとある。第3位ブックオフコーポレーションが1059店舗767億円、第7位ヴィレッジヴァンガードが390店舗389億円などをあわせると2000店舗2000億円を超えるわけだから、ここだけみると出版は別に何の問題も無いビジネスに思える。
実際はこういった会社の伸張の影で零細書店が何千店舗も消えている。それは冒頭の2000店舗以外にゲオのようなレンタルや中古店舗が街中に出てきたからである。ゲオだけでも1500店舗以上あるというから、結局若者がメディアを求めて行く場所は全然減っていないと考えられる。だから零細書店の復活はもうないといえる。これらに関しては単純明快な現象で、決着はついてしまったわけで、若者の情報嗜好の変化に旧来の書店の業態がついていけなかっただけの話である。
業者団体がいくら従来のビジネスを守ろうとしても、そして仕入先などに圧力をかけたとしても、ニーズが変わっている以上は、別の業者がそれを機に参入してくるということである。この間30年ほどかかって何千の書店が消えて何千の情報商材コンビニがビジネスをするようになった。この状態は若い人にとっては1つの情報環境であり日常であるにも関わらずに、それを認めたがらない人もいるようだ。JPO(日本出版インフラセンター)は今年になっても、フューチャー・ブックストア・フォーラム『魅力的な書店作りための環境整備事業概要』というのをやっている。冒頭の2000店舗ほどの業者は今更そんなプロジェクトに見向きもしないだろうし、この30年間何もしなかった零細書店も今更見向きもしないだろう。しかもJPOはリアル店舗で電子書籍を売る実証実験を経産省の補助金でするとかで、それは一体誰のためなのだろう?
決着がついた状況というのは、例えば1500店舗ビデオレンタルのゲオは28,000タイトル揃えてGEO Onlineで電子書籍配信サービスGEO☆Booksを始めた。これはコミック・写真集など携帯電話で使われていたものをスマートフォンでも読めるように再流通する電子書籍配信サービスだと思うが、民間業者がこれくらいのスケールで出来るようになっているのに、なぜ今後の活性化が見込めない補助金事業が必要なのだろうかと思う。
本が無くなるか無くならないかという議論は不毛で、それはCDにもDVDにも古本にもあてはまり、要するに「製造→販売」という川上から見たビジネスではなく、消費サイドのニーズによって店舗経営を考えるように成れるところと、成れないところ、という違いがあるだけである。