投稿日: Nov 21, 2012 1:59:55 AM
販売に一工夫必要と思う方へ
なかなか需要が読みづらい出版物のマーケティングは敬遠されがちだが、1点々々の売り上げ予測は立たなくても、分野ごとに市場の規模をおさえるとか、流通の実態を知るなど、手がかりとなる情報を揃えることはできるし、そこから出版企画を考えるというのが基本であろう。それがなかなか進まないのは日本の出版社がアメリカで言うエージェント的な1点単位の本作り主義だからであることを、記事『権利関係明確化は損か得か』で書いた。出版社とエージェントは共存はできるだろうが、日本には本のマーケティングやプロモーションをする部署が弱いから、EC型の電子書籍には打って出にくいのだと思う。
つまり1点々々の書籍ではなく、書籍群としてマーケティングを考えると、買う動機としては大雑把には「お勧め」によるものと、「立ち読み」によるものになるだろう。「お勧め」の代表は伝統的にある書評であろうが、書店の平積みの露出も一種の「お勧め」である。ネットではAmazonのアフィリエイトなどがある。この「お勧め」は厳密に考えると強弱2段階に分かれるようで、軽いほうがRecommendationで、何らかの権威をもって内容評価を下したらEndosementになる。伝統的な書評は書き手とそれを掲載するメディアが後押ししている面もあるのでEndosementだが、これはネットの時代になったからといって急に増えたりはしないはずだ。
このうちネットで発達するのは軽いRecommendationで、「立ち読み」は今のところネットでなかなか機能していない。一部には電子書籍を無料で読み始めて、あるページを超えると有料になりますよ、というクラウドの仕組みを入れたようだが、利用者の反応はまだわからない。立ち読みというのは書店が続く限り書店にふらっと立ち寄って、何かを発見する面白さがあり、書店という場の価値になっていて、それは今のところAmazonでも崩せない聖域のようなものだ。10月の研究会で話された日販が運営するHonya Club.comというオンライン書店と、リアル書店の共同キャンペーンを記事『変わりつつある出版マーケティング』に書いたが、日本やヨーロッパの電子書籍販売の課題のひとつは書店とのコラボをどうするかであろう。
これは以前から話されていることでは、以前から紙の本のどこかにユニークIDが入っていて電子版を見れるサービスというのがあったが、紙の本を買った人に電子書籍でも読めるようにするというのがあり、それは電子版を無料にするか、うんと低額にするかはいろいろあるだろうが、低額オプションで電子書籍を売るなら、レジでその分を決済できる仕組みがある。あるいは電子書籍のプリペイドのチャージを書店カウンターで行うというような、決済の場として書店を使うこともある。すでに書店のレジはコンビニのレジのように決済端末として特定の用途に使われている。
今家電などがAmazonの安値を問題しているが、家電は店舗がショールームで品定めをした後にAmazonで購入されるからなんだろうが、商品単価が低い書籍では店舗にふらっと入ってその場で買うことが多いだろう。だから「お勧め」系がたどり着くAmazonのような検索による目的買いとはバッティングしにくい。ネット上でAmazonKindle販売と競おうという考えもあるだろうが、Amazonは本の販売だけを考えているわけではなくEC全般の力をもっているので、単に電子書籍販売で対抗しても勝ち目は少ない。むしろアメリカでは考えつかないような販売モデルを日本で構築していかなければ、電子書籍を伸ばせないだろう。
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