投稿日: Jul 22, 2013 1:16:38 AM
画面最適化が必要と思う方へ
今年の電子出版EXPOで驚いたのは、AdobeInDesignのプラグインで紙の紙面を何らかの電子フォーマットで吐き出すアプリが出てきていることだ。何に驚くかというと、まだそういうコンセプトで新製品になるのだ、という点で、それは市場の問題とAdobe自身の問題とがある。市場の問題とは、紙の雑誌などが衰退している中で、その紙面をそのままデジタル配信することの市場性である。これは古くはPDFのパラパラめくりという10年前からあることと大して違わないことをして、果たして今更デジタル版の読者が増えるだろうかという疑問だ。こういったニーズは一定数あることは間違いないが、それはPDFの利用で用が足りてしまうからである。
そこでPDFでは出来ないことをするために冒頭のようなオーサリングシステムが出てくるのだが、これはプラスアルファの機能を持たせるためには、たとえAdobeInDesignを使っていたとしても、プラグインの中でもうひとつ別のオーサリング作業が発生するので、動画やスライドショウ、音声などの素材加工と貼り付けのコストはかかってしまう。それを上回るような評価がえら得るのかどうかが疑問である。
というのは動画やスライドショウ、音声などのハンドリングはすでにWebやEPUBではHTMLの延長上にあって、日常的に行われているものなので、そのようにしてネットで提供される経験豊富なコンテンツに対して、いままで紙中心でAdobeInDesignで仕事をしていた人の作品が競争力があるのだろうか? もしそうならばネット上はもっとFixedLayoutのページで溢れているだろう。FixedLayoutはマンガや写真集などでは昔からあるものだが、それネット配信に広がっているようには思えない。なにしろPDFで十分だと考える人が多いからである。
つまり紙中心で仕事をしていた人がマルチメディアのFixedLayoutを掲げてネットのビジネスに挑戦しようとしているのなら新たなニーズはあるのかもしれないが、そうも思えないのである。
もうひとつのAdobeの問題は、なぜプラグイン・ベンダーにこの領域を任せているのか? ということで、もし紙面をそのままデジタル配信する市場性を感じているならば、InDesign自身のマルチメディアオーサリングの機能を充実させるはずであるが、InDesignだけで競争力のある配信用オーサリングが今もってできないというのはどういうことか?
AdobeCSは素材レベルの加工ではデフォルトなので、HTML用も重要な顧客になっている。欧米ではフォントを含めてタイポグラフィーの世界もHTML+CSS3に移行してきて、その環境で紙の伝統を引き継ぎながら、今度は画面のサイズや画角を意識した新しい紙面デザインが起こりつつある。とすると紙専門デザイナが減って、画面専門デザイナが増えていくことになる。早晩デザインツールも新しい世代に変わらざるを得なくなるだろう。