投稿日: Jul 25, 2012 1:43:43 AM
マーケティングもThinkSimpleだと思う方へ
日本でスマホが2500万台あるという。しかしガラケーの有料コンテンツのスマホ移行はスムースに行っていないといえる。スマホには新しい魅力のあるアプリがたくさんあるものの、コンテンツビジネスとしてブレイクするようなものはまだない。ガラケーの時代には着メロとかケータイ小説とかデコメとか、新たな文化的な要素が加わったように、もっとリッチなデバイスであるスマホで、もっと画期的なものがブレイクする日が来るのだろうか? 位置情報を扱ったアプリやARというのが期待されたが、それらが広まるのだろうか?
ケータイの場合はコンテンツやアプリを作る側がマーケティングの努力をしなくても、キャリアの提供する場に登場することである程度の認知がされ、課金・決済がされる仕組みがあった。しかしスマホの場合はそういった要素が非常に弱いというか、自由度が高いために、マーケティングを考えないで前進することは非常に難しくなったのではないだろうか。PCのWebの世界ではいろんな分野ごとにHubとなるサイトがあったり、課金・決済のプラットフォームもいろいろ組み合わせられるようになっている。これはタブレットの場合は利用できるが、スマホがWebに近づいているといっても、まだメディアビジネス環境としては弱い。
特に電子出版のようなビジネスの立ち上がりをネットに期待する場合に、アナログのサプライチェーンの依存関係から独立してビジネスプランを立てるところで戸惑っている会社が多いように思う。とりあえずデジタルコンテンツを作ってみたけれど売り方がわからないという状況に陥る。そのようないくらかの経験を元に振り返ると次のような混乱があるように思える。
1.マーケティングとマーチャンダイジングの混同
電子書籍になるとソーシャルリーディングができるとか、eLearning連動できる、読者コラボによる出版ができる、などアイディアが膨らんでくることがあるが、それは一旦横に置いておいてコンセプトを絞り込む必要がある。提供者側が何を提供しようとしているのかが揺れていると、生活者からみると買う理由がはっきり見つけられなくなる。生活者にどうやって知らしめるかも決まらずに動く標的を相手に格闘することになる。これは、ビジネスがうまくいかないと陥ってしまう傾向で、あれこれ思案するうちにどんどん発散してしまう。
やはりターゲットを明確にすることから始めるべきで、最初はニッチ的に足場固めをしつつ、顧客を育成していくような、エクスペリエンス・ベースの進め方が堅実だろう。ただニッチではなく不特定多数対象の場合は、ニュースで芥川賞・直木賞の発表の時には電子書籍が売られているようなトピック・ベースがある。
2.机上の空論 玉突きマーケティング
デジタルの販促方法は意外に選択肢が少なく、オンラインの直販もニュースリリースもバナー広告もそれほどはあてにはならないのだが、販売の企画書ではまず何をして、その成果を元にどのようなことをして、というような仮説をたてる。しかしそれが確実に実行できる保障はない。屋上屋根を重ねるような複合のビジネスモデルではなく、ターゲットをはっきりさせて、そこに到達する道筋を多く太くしていく考えになる必要があるだろう。ネットではなかなか書店を回って足で営業するようなことに匹敵するやり方はないが、ネット上のニュースやイベント連動を多くしていくという方法はあるだろう。
3.CRMで売れるものはない
DMやスパムのようなメールもCRMの結果であるし、どこかで個人情報を登録すればパーソナライズされたバナーが出るようにもなっているが、それらがどれだけクリックされて有効なものかは、自分が生活者の立場で考えればわかることで、紙のDMのレスポンス率よりもネットの方が悪いのは実態だろう。紙のDMの場合は郵送料が高いのでかなり絞込みをするが、メールの方がスパム的に数が増えるので、ヒット率は下がっていく。こういったベースで個人登録を多くしてさらに拡大してもビジネスが円滑に行くとは思えない。
それよりもリスティング広告のようなお勧めの方が受け入れられやすいのでGoogleはこれほど大きな会社になった。CRMはニッチな分野でリピートオーダーがあるような場合には気の利いたサービスになり得るが、顧客との付き合いの薄い段階では個人情報よりも、文脈に沿ったお勧めの方が効くことが証明されたのではないか。
電子出版再構築研究会 名称:オープン・パブリッシング・フォーラム Ebook2.0 Forumと共同開催