投稿日: Jul 23, 2013 1:3:55 AM
事業転換が中途半端と思う方へ
子供の頃に好きだった歌に「悲しき片思い」というのがあって、当時のpopsの主流テーマであったと思う。こういうテーマは大人になると忘れてしまうのだが、考えてみると自律した仕事をするようになって、一番の問題は片思いであったともいえる。例えば営業マンが何かを売り込みにいく場合に、絶対顧客にメリットがあると思っても、それが理解してもらえないとか、また提案をして内容はよいと評価されても、アンタほんとに出来るの?というように、こちらの能力を認めてもらえないことが日常起こるからである。
ビジネスであってもWinWinとか善意というのは必要で、それがないと継続した良い関係は維持できない。言いかえれば信用を築くことで、相手の身になって働いてくれるから、いろんなことが任せられることになる。しかしこちらがそれを望んでいても、相手が乗ってこないのは、冒頭のことや、またこちらの理解の至らないところがあるからである。この顧客の役に立ちたいという当方の想いと、現実の顧客がこちらを見る目のギャップを埋めていくことが、マーケティングであったりプロモーションの本質であろう。
当然ながら当方の実力が不足している点はいろいろあろうが、過去の業務実績以上にこれからの問題に取り組む姿勢を顧客は注視しているので、若い人や若い会社でもチャンスは生まれるし、必ずしもベテラン営業マンが良いとは限らない。しかし若い人を全面に出すにしても、母屋が違和感をもたらすとか、現場のスキルに疑問がもたれないような施策を施さないと前線で若い人が倒れてしまう。
つまり無名の会社よりも、過去の業態がマイナスに響いてしまう場合もあって、子会社などで新規事業をさせることが多くなる。印刷業界も多角的な事業をしているところは多くあったが、印刷の看板が邪魔になることが多く、後継者が新たな業態に挑戦して、事業転換を図るケースがある。このようなことをしている間に、一体自分たちの業態は「何屋」か判らなくなりがちだ。
かつての印刷業は印刷機を設置しているという共通項で業界を形成していたが、生き残りの中で顧客指向に転換して印刷機も廃棄した会社の群は“名無しさん”になってしまった。これはマズいだろう。実態としてナンデモ屋であったとしても、会社の目指す方向は定めるべきだし、それによってどの業態に所属するのかを決めなければ、顧客側からみると中途半端な会社に思えてしまう。
中国のように1990年代後半から産業化した若いところでは、DTPはコンピュータを使って仕事をするので、最初からソフトウェア産業にくくられていて、リクルート面でもインキュベーション支援策でも国のバックアップが受けられている。ところが日本のプリプレスはソフトウェア産業から距離があって、IT関係の業務を行う時のコラボレーションは中国のようにはいかない。日本はかつての出身地である「印刷」にこだわりすぎたのかもしれない。